おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

DNAキメラ

2017/12/04

ギリシャ神話にはキマイラという、頭がライオン、胴体が山羊、しっぽが毒蛇という伝説の生物が登場するという。
このキマイラが生物学上でいうところのキメラの語源だそうだ。
キメラとは一つの個体の中に異なる二つの遺伝情報を持つ細胞が混じっている現象や、その個体そのものを意味する。
以前、芸能人夫婦の間の子供の遺伝子が、父親のものと合わないという騒動があったが、あくまでも父親の子であるという母親の主張を支持しうる現象としてネット上でも注目を集めていた。
まあ、その夫婦の真相は分からないが、医学的には本当にありうる現象のようだ。

ヒトに起こるキメラ現象の多くは血液キメラだそうだ。

例えば双子の胚は胎盤の中で血液供給を共有することがしばしばあるため、血液を作るもとになる血液幹細胞がもう一方の胚へ移動可能である。
移動した血液幹細胞が他方の子の骨髄に定着した場合、持続的に血液細胞を供給することになり、自分の遺伝子と兄弟の遺伝子を持つ血液が生み出されることになる。
一卵性双生児であればどちらも同じ遺伝子であろうが、二卵性の場合は遺伝子が異なるので、血液キメラが生じる。

ペアの約8%にこの血液キメラは生じるという。

結構な確率である。
次のようなケースもある。
もともと二卵性双生児だったが、妊娠初期の段階で一方の胚が他方の胚に吸収されてしまうケースである。
このような現象は「パニシング・ツイン(消滅した子供)」と呼ばれる。
本来双子で生まれてくるはずが、兄弟の遺伝子を抱えながら一人で生まれてくるのだ。
このパニシング・ツインではさらにまれな現象を引き起こすことがあるという。
もともと「吸収した方の胚」は両親の遺伝子を受け継いでいるのだが、

その胚の成長に「吸収された方の胚」が大きく関わると、

遺伝子的には「吸収された方の胚」が親のような役割を果たしてしまうこともあるのだそうだ。

つまり、場合によっては両親の血液型からは生まれるはずのない血液型の子が生まれることもあるという。
仮に母親の血液型がOO型、父親がAB型だとすると、生まれてくる子供は通常AO型かBO型になる。
二卵性で身ごもった二つの胚がそれぞれAO型、BO型だった場合でみてみよう。
仮にAO型が途中で吸収され、BO型の成長に大きく関わり遺伝子的な父親の役割を果たしてしまうと、

吸収した方の胚はOO型とAO型の両親から生まれたような遺伝子の組み合わせになってしまい、

血液がOO型の子供として生まれることもありうるのである。

これは本来OO型とAB型の両親からは生まれるはずのない血液型だが、2014年にアメリカで実際に起きた事例だそうだ。
血液キメラ以外にも吸収された胚が成長すると、一つの個体の中で別の遺伝子を持った部位を持つことになり、仮に遺伝子検査をした場合、サンプルをどこからとったかで結果が異なる可能性もある。
当然のことながら極めてまれなケースであり、圧倒的に多くの場合の遺伝子検査は妥当なものなのだと思うが、遺伝子検査は完全100%正しいわけでもないことも知っておく必要があるだろう。
こうしたキメラ現象はムラのある肌の色や、左右で異なる色をした目、時には性器を二つ持って生まれるなど外見的特徴を示すこともある。
公的な報告としては100例ほどしかされていないそうだが、キメラ自体は輸血や骨髄移植、母親とその胎児間でも起こることが知られており、発生頻度は高いのではないかとも指摘されている。
ちなみに、キメラと勘違いする現象に「モザイク」というものがある。
キメラは他者の遺伝子が関わることで一つの個体の中に二つの異なる遺伝子の細胞が存在する現象だが、

モザイクは自分自身の体細胞の分裂の失敗や突然変異によって自分の体の中に遺伝子の異なる部分が出来てしまう現象である。

ん~ややこしい。
ところで、遺伝に関してはこれまでの知見以上に複雑であることが最近の研究で明らかになってきている。
例えば、2014年に発表されたオーストラリアのニューサウスウェールズ大学のハエの研究では、本来の父親よりも、以前に交尾をしたパートナーの影響を多く受けているという驚きの結果がでている。
以前に身体の大きなパートナーと交尾していれば子供が大きくなる傾向があり、小さなパートナーと交尾していれば子供が小さくなる傾向があるというのである。
これは前のパートナーの精子に含まれていた化学物質が交尾の後もずっとメスの体内に残り続けているためではないかと考えられている。
繰り返すが、DNA的にはもちろん本来の父親のものである。
しかし、子供は性行履歴の結果であり、父と母をプラスして2で割ったものが子供であるという理解は単純すぎるというのである。
う~ん、なんというか複雑である。
人間でも同じ事が言えるのだろうか。
また、これまでY染色体は男性だけのものとされてきたが、女性でもY染色体をもつケースがあることも確認されてきている。
これは男児を生んだ母親が妊娠期間中の血液交流で持つことになるとか、双子で兄弟に男がいる場合に胎盤を介して血液交流で持つこともあるそうだ。
双子でなくとも、上に男の兄弟がいる場合にも母親を介してY染色体をもつこともあるという。
一説にはセックスだけでもY染色体を持つことになる場合もあるとの説も。
さらには人間を含む生物はウイルスを介して遺伝子を交流させ、お互いに影響を与え合い、一部の遺伝子情報を書き換えているとの指摘もある。
遺伝子ってよく言えば柔軟性がある、悪く言えば案外安定していないということか。
生命の成り立ちとは本当に複雑である。
なんか、DNA検査で真実に迫ろうとすればするほど、真実はもっと複雑で理解の範疇を超えた世界に入っていってしまいそうである。
もしかしたら、親子関係を疑っても調べない方が幸せなのかもしれない。
DNA検査をしても100%完璧な証明などはありえないのだから…。

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