鎮痛剤
2022/09/14
生命活動の中で最も不快な感覚は「痛み」だろうか(まあ、かゆみも相当不快だが・・・)。
もちろん程度問題ではあるのだけれども、ひどい痛みはエネルギーを消耗させ、精神を萎えさせ、活動を抑制し、時にそれがあまりにもひどい時には最悪の選択をしてしまうこともあるかもしれない。
だからその痛みを抑えてくれる鎮痛剤は人間や動物にとって今や必要不可欠なものだ。
これからも決してなくなることのない薬だと思う。
しかし、それも使い方を誤れば逆に弊害を招いてしまうというお話。
鎮痛剤が一般的に最も多く使用されるのは頭痛だと思うが、頭痛には下記のように様々なタイプがある。
一次性頭痛(機能性頭痛・慢性頭痛とも呼ばれる):原因疾患のない頭痛
〇偏頭痛:血管周囲に炎症があり、血管が拡張するときに痛みが起きる
〇緊張型頭痛:主に頸部周辺の筋肉の過緊張によって痛みが起きる
〇群発頭痛:原因がはっきりしないが、目の奥の血管の周囲に炎症が起きていると考えられている。
二次性頭痛(症候性頭痛とも呼ばれる):頭頸部に何らかの原因疾患(腫瘍や外傷等々)がある頭痛
二次性頭痛はまずは原因疾患の改善が必要であり、その過程においても鎮痛剤が使用されることもあるかもしれないが、問題の多くは一次性頭痛の方にある。
偏頭痛は血管の周囲の神経に炎症が起きていて、リラックスし始めて血管が広がると周りの神経を刺激してしまい、それが痛みを起こすため、仕事が終わり近くになるとか、休日に限って痛みが起きるという、いわばリラックスした時に頭痛が起きるという方はこのタイプである。
群発頭痛も同じ機序で起きる。
緊張型頭痛は筋肉の緊張からくる頭痛なので、いわゆる肩こりのひどいタイプで起きる頭痛である。
しかし、両者は混在していることも多いので、両方とも思い当たるという方も多いだろう。
このように頭痛の原因が分かれているため、当然一口に鎮痛剤といってもそれぞれの頭痛に対する薬の作用機序も異なる。
血管を収縮させる薬、痛みの感覚が脳へ伝達されるのを遮断する薬、筋緊張を和らげる薬。
様々ある中で原因とピタリとはまって効果があるうちはいいのだが、長年服用していくうちに効果が薄れ、使用頻度が増え、それに従って痛みの度合いが増していくというケースが非常に多い。
それがいわゆる「薬物乱用頭痛」である。
痛みを抑えるための薬によって起こされる頭痛というなんとも矛盾する病態だが、現在ではきちんとその定義も存在している。
薬物乱用頭痛
〇頭痛が1ヶ月に15日以上起きている
〇1種類以上の頭痛薬を、3ヶ月を超えて定期的に乱用しているなど。
詳しくは各種サイトを参照してもらいたいが、1ヶ月に10日以上痛み止めを飲んでいる場合は要注意とされている。
病名がきちんと確立されるほど、このような頭痛が一般的になったということである。
個人的に問題だと思うのは、来院された患者さんに聞いてみても「薬物乱用頭痛」という認識がなく、医者からも何の説明もされておらず、鎮痛剤を処方され続けているということ。
特に血管を収縮させる薬はいわば交感神経を刺激する薬であり、これを常用し続けるということは、体は常に交感神経が高ぶらせた状態にあるということ。
実際そのような患者さんは眠りが浅く、手足が冷え、中には動悸を訴えるなど自律神経の乱れを感じさせる症状を抱えていることが多い。
単に頭痛がひどくなっているだけではないのである。
そのような患者さんに常にいうのは「薬からの脱却」ということである。
鎮痛剤は確かに多くのメリットを与えてくれるかもしれないが、頭痛の根本的な治療には繋がらないことが多い。
少なくとも当院へ来院される患者さんの場合は鎮痛剤を飲み続けても改善することがなく、多くの問題を抱えているからこそ藁にもすがる思いでこられたのだ。
一定期間は頭痛に悩まされることになるが、鎮痛剤の常用を止めることこそが改善への一歩となるのである。
ある薬剤師が語るには、学生の最初の授業では「薬は人体にとって異物であり毒物である」ことを教わるという。
どんな薬であろうとも、多少なりとも体へ負の影響を与えうるものであり、その負の影響よりも現在抱えている症状改善によるメリットが上回る時のみ処方されるものなのだと。
私たちの中で最も多くの人が服用する使用頻度が高い薬が鎮痛剤だと思われるが、その鎮痛剤もまた同じである。
少なくとも上記の一次性頭痛は鍼治療で改善しうるものである。
代替治療があるのだから、薬から脱却することを是非ともおすすめしたいのである。
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