糖尿病の薬でダイエット?
2025/03/12
最近、腹の出っ張りがかなり目立ってきており、かなりやばい。
身長172㎝、体重83㎏でBMIは28.06、正真正銘の肥満1度である。
ちなみに自分の場合標準体重となるのは65.1㎏(そんなのムリだー)。
学生の頃は74㎏ぐらいで推移していたので、せめてそれぐらいであればいいのだが、ここ10年ほどは70台の声を聞いていない。
これまでも何度かダイエットに関する記事を書いてきたが、今回はそれらを実践できない自分にとって朗報となる記事を紹介したい。
偶然にもアレルギーに関連する物質や糖尿病の治療薬などにそれぞれダイエット効果が確認されたという。
一つは「TSLP」という免疫細胞から分泌されるたんぱく質の一種である。
このTSLPはエネルギー代謝を調整する免疫細胞の仲間を活性化させる役割を持つのだそうだ。
上林博士らが、マウスにこのTSLPを注射した狙いは、マウスの「インスリン抵抗性」を下げることだった。
インスリンとは膵臓から分泌されるホルモンで、血中のブドウ糖を各細胞に取り込み、血糖を調節する働きをもつ。
糖尿病とはこのインスリンが様々な原因によって働かなくなることによって起こる病気だが、その原因の一つが「インスリン抵抗性」である。
平たく言うと、普段から飲みすぎ、食べ過ぎなどを行っているとインスリンの過剰分泌が起こってくる。
そうするとだんだんにインスリンそのものの効力が落ちてくる。
そうなると身体がインスリンに反応しなくなる体質になる。
これが「身体のインスリンに対する抵抗性が高まっている」状態である。
このインスリン抵抗性が高くなる要因というのは他にも運動不足や肥満なども挙げられる。
このインスリン抵抗性を下げる治療法を探るためにマウスにTSLPを投与してみたところ、マウスの体重が一気に下がるという予想外なことが起きた。
45gまで太らせたマウスが28日間で健康的な体重である25gまで落ちたという。
さらに驚きだったのは内臓脂肪が落ちたという点。
内臓脂肪は増えすぎると糖尿病・心疾患・脳卒中のリスクを高めてしまうものである。
他にも血糖値、空腹時インスリン値、脂肪肝疾患のリスクも減ったとのこと。
あまりにも急激なダイエット効果だったので、他の疾患や食欲減退なども疑われたがそうしたことは一切なく、逆にいつもより2~3割増しのエサの量を食べ、運動量も減っていなかったという。
尿や糞を検査しても脂肪の排出は認められず、ため込んだ脂肪は一体どこへ行ってしまったのか。
実はTSLPを投与されたマウスは毛皮がギトギトに脂っぽくなっていたという。
そこでその脂を調べてみたところ、皮脂であることが判明した。
皮膚のバリアとして機能する皮脂はカロリーの密度が高い脂肪なのだそうだ。
つまり、マウスは「脂肪の汗」を流して瘦せたのではないかと考えられた。
その後の研究で、人間にも同じ方法が使える可能性があることも明らかになってきており、これが確立すれば単に肥満の改善だけでなく、動脈硬化などの脂質疾患の改善にも役立つのではないかと言われている。
もう一つの糖尿病関連の薬は「セマグルチド」という。
これは2型糖尿病の治療薬としてすでに用いられている。
糖尿病は様々な原因で発症すると上述したが、1型糖尿病が膵臓のインスリンを分泌する細胞が自己免疫によって攻撃され分泌できなくなるために起きる(食生活は関係なし、若者に起きる)。
それに対し、2型糖尿病は過度の飲食によってインスリンの分泌量が減るとか、上述したインスリンの抵抗性が高くなり効力が発揮できなくなるために起きる糖尿病である(いわゆる生活習慣病と言われるタイプ)。
研究では16か国、2000人の肥満成人に対し、週に1度このセマグルチドを注射し、生活指導も行った。
プラセボのグループも若干体重は減ったが有意なほどではなかった。
一方本物のセマグルチドを注射した方は、68週後、平均で14.9%の体重が減り、参加者の約3割では20%以上も減ったという。
自分の場合なら83㎏から66.4㎏以下にまで落ちたケースが3割もあったということだ。
これは脂肪吸引にも匹敵する効果だという。
なお、投与をやめた後のきちんとしたデータはないそうだが、ある参加者は実験終了後ジリジリと体重が戻っていったということなので、やはり健康的な食事制限と適度な運動は必要という基本はそのままのようである。
このように厳しい食事制限や運動の継続を必要としないダイエット法があるのは事実らしい。
だが、心配なのは効果の持続性と副作用である。
上述のように少なくともセマグルチドに関しては投与をやめると元に戻ることが示唆されている。
であれば、楽しながら痩せた体型を維持するには投与し続けなければならない。
一年ちょっとの投与期間では他に健康被害は起きていないようだが、それ以上継続したときに効力は持続するのか、他に健康被害が出る可能性はないのか、そもそも経済的コストはどれほどかかるのか。
クリアしなければならない課題はまだまだあるようだ。
実はこの記事は数年前に見つけたものだが、この二つの薬の取り扱いが現在どうなっているのかを調べてみた。
まず、後者のセマグルチドは「リベルサス」という商品名で注射薬や経口薬としてダイエット目的でも処方されるようになっている。
あくまでも処方薬なので、受診しなければならないようだが、オンライン診療というものもあり(大丈夫か?)、「リベルサス」と検索すれば出てくる。
一方、前者のTSLPのダイエット目的での処方は今のところざっと見た限りでは行われていないようである。
2021年の記事であり、その時点ではマウス実験の段階だったので、副作用の確認も含めて実用化されるまではまだ時間がかかる模様である。
やはり健康のためには地道な努力を重ねていかなければならないのかもしれない(泣)。
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