おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

芽殖孤虫

2021/07/14

芽殖孤虫はヒトに寄生する人体寄生虫の一種である。

成虫は同定されていないために孤虫の名がつけられている(学術的に「親の分からない孤児の幼虫」を「孤虫」というらしい)。

ヒトの体内に入ると、急速に分裂して全身に転移しながら増殖し、宿主を確実に死に至らしめるという非常に危険な性質を持つとされている。

移動性のコブを形成し、そこから摘出された虫体は数~10数mmで不定形だという。

発症した者には両生類や爬虫類の喫食経験者が多いことから両生類・爬虫類からの感染の可能性が示唆されているが、ベネズエラで行われた水辺で捕獲した小動物(トカゲ、カエル、フクロネズミなど)の寄生虫を検索したが、芽殖孤虫は発見できなかった。

未だその生活史や感染経路は不明のままである。



この芽殖孤虫はヒトを適切な宿主としていないため成虫になれず、幼虫のまま増殖を起こすのだが、その状態を「幼虫移行症」というらしい。

「幼虫移行症」には幼虫が皮下に侵入した場合の「皮膚幼虫移行症」と、内蔵に侵入した場合の「内蔵幼虫移行症」と、目に侵入した場合の「眼幼虫移行症」とがあるとのこと。

芽殖孤虫には骨へ侵入・増殖した事例も報告されており、すべての内蔵に侵入する可能性がある。

世界的に感染例は少なく、2016年の時点では17例のみ報告されている。

その少ない中において日本が最も感染例が多くなっており8例、台湾3例、アメリカ2例、カナダ・パラグアイ・ベネズエラ・フランス領レユニオン島の各1例となっている。

感染例は少ないが現在のところ致死率は100%で、上記の感染例全ての方が亡くなっている。



2012年にもドイツ人男性の感染例が報告されているが、この事例では遺伝子検査で芽殖孤虫とほぼ一致したそうだが、臨床例が芽殖孤虫の特徴と一致しなかったせいか、感染例には含まずに集計されていることも多い。

男性はパラグアイを含む南米旅行後に感染が確認された。

脇腹にかゆみのある腫れができたために2週間後に受診し、虫体の摘出手術を受けた。

その後再発はしていないという。

もしこのケースが芽殖孤虫であれば、芽殖孤虫が皮下に留まっている場合や、分裂前の早期に摘出した場合は救命できる可能性があることを示唆している。



古い事例だが日本人の症例も紹介したい。

なお、なかなかショッキングな経過をたどるので、「グロは嫌い」という方はこの節を飛ばされた方がいいかもしれない。

1915年9月のある日、熊本に住む18歳の女性が友人宅から帰宅後、悪寒と強い頭痛を感じたという。

翌日には食欲を失い、4日後には左大腿部に赤く痛みのある腫れが出来始めた。

痛みは徐々に増していき、夜も眠れないほどになったため受診し、腫れを切開してもらうと大量の膿が流れ出た。

その後も切開を2回ほど行ったが、痛みが引くことはなく2年が経過した。

その頃には腫れは左下肢、右大腿、下腹部にまで広がり、それを引っ掻くと皮膚が破れ、膿や血に混じって白い虫が出てくるようになった。

その数、多い時には2~30匹にも及んだという。

症状は悪化の一途をたどり、ついに1921年4月に九州大学病院に入院することになった。

肥大した患部の形成術を数回受けるも好転せず、やがて肺炎の兆候も現れ、全身状態が悪化し、1922年4月12日、その女性は24歳という若さで亡くなったという。

死後の解剖では胸、腹、大腿部、脳、肺、小腸、腎臓、膀胱などから無数の虫が検出されたそうだ。

実に恐ろしい経過をたどるものである。



はじめは「痛みを伴う移動する腫れ」が特徴のようであるが、進行に伴い様々な臓器への増殖が可能なため、どこへ転移したかによって様々な症状を呈する。

嘔吐や下痢、掻痒感、腹痛、頭痛、呼吸困難、言語障害、脳障害。

骨盤に転移したケースでは当初椎間板ヘルニアや坐骨神経痛、骨腫瘍などが疑われていたというので、画像診断だけではやはり診断は難しいようである。

治療として服薬は効果がなく、摘出術となる。

中には分裂しないタイプの芽殖孤虫もいるとの報告もあるが、基本的に急激な分裂・増殖を繰り返すとされており、摘出しても1匹でも残せばその進行は止められない。

それが致死率100%とも言われる所以らしい。

成虫が確認されていないため、最終宿主が何なのかも分かっていない。

しかし、前述のように、カエルやヘビの生肉の摂取をしていた事例が多いので、少なくともそれらを食す場合は十分に加熱したものを食べることが重要だろう。

生食の危険性は豚肉や魚介類でも常日頃言われていることであり、カエルやヘビを食すること自体が安全ではないことは理解しておくべきである。



ちなみに芽殖孤虫以外にも孤虫症の名で呼ばれているマンソン裂頭条虫という寄生虫がいるが、これは現在では既に成虫が確認されており、厳密には「孤虫症」ではない。

この成虫を確認したのは日本人だそうだ。

「孤虫症」と日本とは関係性が深いのか?

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