舌磨きはやってはいけない?
2022/11/22
一時期、舌磨きが推奨されていた。
それと同時に舌磨きをしてはいけないとの言葉も聞かれていた。
一体どちらなのだろう。
舌磨きとは舌苔(ぜったい)を落とすための行為だが、何故やってはいけないのだろうか。
舌苔とは舌の表面を覆っている苔状のものを指し、口腔内が口呼吸などして乾燥していると生じやすいとされている。
また、喫煙家、便秘時、消化器疾患、熱性疾患、脱水症状、ストレス、免疫力の低下などでもしばしば認められる。
当院ではあまり実施していないが、東洋医学では「舌診」と言って、舌の状態を見ることで身体状況を判断する診断法もある。
苔状のものは白色のことが多いが、これは舌の上皮が伸びたものに細菌や食べカス、粘膜のカスなどが付着したものである。
褐色や黒色のこともある。
その色が強くなると毛髪状に見えることもあるという。
この苔の正体は真菌であり、抗生物質の長期使用時などに見られるようになる。
舌に裂溝が生じる溝状舌は先天的なものの他に全身疾患の一つの症状としてや外傷、感染などでも見られるが、その溝に舌苔が溜まりやすくもなる。
口臭の原因ともなるため以前は除去することが推奨されていたが、最近では舌の粘膜が意外に傷つきやすいことからブラッシングすることでかえって正常な細胞を傷つけてしまうので、現在では推奨されなくなったとのことである。
それに、たとえブラッシングをしてその場で舌苔が多少落ちたとしても基本的には改善に繋がらず、それよりも根本的な原因の改善の方がよほど早く舌苔の解消につながるのである。
自分も、食べ過ぎ状態の日が続くと、まれに舌が白くなることがある。
そのような時は胃の不調も感じるので、「あぁまただ」と思いつつ節制することにしている。
するといつしか舌の白いのは消えてなくなるのである。
そもそも舌の細胞は非常に敏感で、空気中に触れているだけで白っぽくなるという。
だから口呼吸していると白くなりやすいのだが、この変化自体は正常なものでもあるので、これをブラッシングすると正常な細胞を傷つけることになるというわけだ。
自分はあまり意識していなかったが、正常な舌は口腔内では常に口の天井にあたっているのが普通らしい。
この状態でいると、食べカスなどの汚れの場合は自然と落ちるそうだが、舌の筋力が低下している、いわゆる「低舌位」の場合、舌が上部に接触していないために汚れがこびりついてしまうのだという。
老化防止に舌の運動をすると良いと聞いたことがあるが、舌の筋力を維持・増強する意義は舌苔予防にもあるということのようだ。
ちなみに、舌の位置が通常よりも下がる「低舌位」の弊害はこれだけではない。
通常であれば舌先は上の前歯のすぐ後ろに位置し、唾液を飲み込み度に舌が口蓋に密着する。
そうした舌と顎とが日々圧力を加え合うことで舌の筋力が強化され、上顎骨を前方・側方へ押し、骨の成長を促すことに役立っているのだそうだ。
それが「低舌位」の場合、舌先は下の前歯の後ろに位置し、唾を生み込む際は下顎を裏側から押している状態となる。
なので、下顎突出が促される一方で、上顎の成長は不十分となり歯列が乱れ、結果しゃくれや上下の歯のかみ合わせが場所によって前後に入れ替わる交叉咬合などの原因になるという。
ん~舌の力を侮ってはいけないようだ。
もし、乳幼児期に口呼吸やおしゃぶりの常用などがあるようなら、注意すべしとのこと。
治療法としては現在マウスピースによる矯正があり、幼い子にも使用できるそうなので、専門医に相談してみると良いだろう。
舌の粘膜が敏感であることを考慮して、舌専用の「舌ブラシ」というものも出てきている。
舌磨きをしてはいけない理由が舌の細胞を傷つけてしまうことであれば、細胞を傷つけない「舌ブラシ」であればやっても構わないのかもしれない。
しかし、舌苔の本態が細菌であると、舌に根を張るために、やはり舌磨きだけで舌苔を除去することはできないとのこと。
これは実践してみるとよくわかると思う。
ただ、舌苔解消をより早く進めるため、あるいは予防的な意味合いで舌磨きをすることには意味はあるとされているので、舌苔の根本原因の改善を進めることを基本としながら、舌磨きを補助的に合わせて行うと良いと思われる。
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