本態性振戦
2022/03/31
手が震える病気は色々とあるし、場合によっては精神状態の高ぶりで震えることもある。
しかし、中には原因のはっきりしない震えというものもある。
それが本疾患の本態性振戦である。
「本態性」とは明らかにその症状はあるけれども、その原因が明らかでないことを指す。
本態性高血圧症とか本態性高体温症など「本態性」がつく病状は多くある。
「手の震え」でもっとも有名な疾患はパーキンソン病であろう。
その為、この本態性振戦はパーキンソン病と間違われやすい。
しかし、病因は全く異なるので、正しい治療を受けなければ、当然のことながら治療効果は全く上がらないことになってしまう。
本態性振戦の場合、症状に個人差はあるが「両手を伸ばした際に手が細かく震える」「首が細かく震える」「声が震える」などの症状がある。
一方、パーキンソンは脳の神経細胞の変性で起きる病気であり、進行すると手の震え(振戦)の他に、「固縮(体が硬くなる)」「動作緩慢」「姿勢保持障害」などの特徴的な症状がそろってくる。
この振戦が紛らわしいのだが、この振戦もよく見ていくと両者には下記の表のように違いがある。
原因はよくわかっていないが、精神的に緊張すると震えがひどくなることから、興奮したときに働く交感神経が関係しているとも言われる。
逆に酒を飲むと症状が和らぐらしく、それがリラックスすることで症状緩和につながることを意味しているのであれば、やはり交感神経の過剰な働きがあるのかもしれない。
ときに家族歴も見られるというのも、神経学的に、あるいは生活環境的に交感神経の過敏な働きを引き継いでいるのかもしれない。
もし、そうであれば、リラックス状態に導く鍼治療は有効な治療法になるかもしれない。
基本的に震え以外には何ら問題はないので、軽度であれば治療の必要性は無いとされているが、見た目等の問題で困っておられる場合は積極的に治療を受けてみたほうがいいだろう。
現代医学的には以前は震えの元になる脳の部位に針を刺し焼くことで1回の治療で治癒していたという。
ところが患者さんの側がそれを受けたがらず、また、電気刺激で改善することが分かってきて、現在ではヘルメット型の装置をかぶり、MRIの装置の中で超音波を当てることで震えを引き起こしている脳の発信元を焼き切るという治療法が取られるようである。
その他にも薬物療法、ボツリヌス毒素療法、手術療法などがあるそうだ。
手術とは脳に電極を、体にはペースメーカーのようなものを埋め込み、電気刺激で発信元を調整するというものだそうだ。
しかし、ボツリヌス毒素療法は保険適応外であり、日本人の骨は超音波に適さないケースもあるとか、各種装置に精通した専門の技術者が必要などの課題が多く、まだ発展段階とのこと。
かなり大掛かりな治療でもあり、このような話を聞くと尚更とりあえず鍼治療を試してみることをお勧めしたい。
本態性振戦は加齢とともに増加し、60代では10~20人に1人と言われている。
確かに結構震える人を見かけることはあるかもしれない。
先述したように、震え以外に症状はないため、軽度であれば治療の必要性はないとされているが、「見られている」と思うと余計緊張を増し、それが更に震えをひどくさせるという悪循環が生まれやすいというのは容易に想像できる。
震える人がいても、必ずしも悪い病気とは限らないことを私たちも知っておくことが大事だろう。
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