おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

怒り

2018/07/26

一般的にストレスが病気を引き起こす元になるのは知られているが、
一口に「ストレス」といってもその感情は様々である。
イライラと苛立つ怒りなのか、
沈み込んでいきそうな悲しみなのか、
いつもビクつくような恐怖なのか、
グルグルと同じところを巡るように思い悩むものなのか、
そして、東洋医学では過度の喜びも体に変調をきたすものと考えられている。
様々な感情からくるストレスの違いによって、東洋医学ではそこから引き起こされる病気も異なってくると考えられている。
そこで今回は怒りと病の関係を見ていきたい。
まずは“キレる“、”怒る“のメカニズムを見ておこう。
人は誰もが自分なりの価値観を持っている。
自分が正しいと思っている信念、「こうであるべき」と信ずるところである。
「食べるときには音を立ててはいけない」とか、
「遅刻してはいけない」
「社長の言うことは聞くべきである」など、
「~してはいけない」、「~するべきだ」、というような自分の中にある物差しである。
それを「コアビリーフ」と言うそうだ。
その「コアビリーフ」が裏切られると、「悲しい」「辛い」「後悔」など様々な感情が生まれる。
それを「一次感情」という。
その「一次感情」が入るコップがいわゆる「怒りの許容量」になっており、そのコップが一杯となってあふれ出た時に「二次感情」として怒りが生まれるのだそうだ。
そして、一口に怒りと言っても、心の中でイラつく程度の軽いものから、いわゆる“キレて”しまう激しい怒りまで段階がある。
その怒りをあなたが自分の中で処理できるのか、
表に出してしまうのか
の境目は
「フラストレーション耐性が高いか低いか」
の違いだと言われている。
耐性が高い人はキレにくく、低い人はキレやすいのである。
「フラストレーション」とはストレスがかかった時に、欲求不満とか、憤慨とかストレスに伴って起きる精神的反応を指す。
なので、フラストレーション耐性の高いAという人と耐性の低いBという人がいた場合、
二人に同じようなストレスがかかった時にフラストレーションがたまり、怒りを抱え込むのは二人とも同じなのである。
しかし、フラストレーション耐性が高いAはじっと耐えて状況に応じた対処をしていける。
一方、耐性の低いBはキレて大声や暴力的な言動を示すことで状況の打開を図ろうとするのである。
さて、その「フラストレーション耐性」は高い方がいいのだろうか、低い方がいいのだろうか。
一般的に怒りをため込むとうつ病になりやすいと言われる。
怒りが長期にわたると「憎悪」や「恨み」といったものに変わっていく。
言い返せない、やり返せないままにそんな感情だけが続くと、次第に自分自身のプライドを傷つけ、落ち込み、空虚で絶望的になり、ついにはうつ病になっていくのである。
精神疾患だけでなく、普段から怒りをため込んでいる人は、そうでない人と比較して心臓関連疾患が47%増、癌が70%増という調査結果もある。
確かに「怒りを発散する人の方が健康に良い」との研究結果も出ている。
健康のためには怒りはため込まず、吐き出す方がいいようだ。
ただし、やみくもに怒りを爆発させていればいいかというと、そういうわけではない。
やはり、怒りを単純に爆発させても周囲との軋轢をうみ、場合によっては社会的な信用を失墜させ、破滅に導くこともあるからである。
かなり怒りっぽい人は、やはり心疾患のリスクが上がるそうなので、健康上からみても「適度な発散」が良いようである。
TMS理論というものがあり、この理論では「腰痛は怒りの表れ」とされている。
痛みの直接的な原因としては血流不足からくる酸素欠乏によるとされている。
しかし、その遠因としてはストレスからの「防御」によって起こる痛みなのだというのである。
学校へ行きたくない子が腹痛になるとか、大人でも胃・十二指腸潰瘍になるなどストレスが消化器系統に問題を起こすことはよく知られているが、
TMS理論によるとストレスは筋骨格系にも影響を与えるという。
それも「無意識下の怒り」が影響を与えているらしい。
これは大きく分けて三つの「怒り」の蓄積によって起こる。
一つは日常生活上のストレスからくる怒り、
二つは幼児期のトラウマからくる怒り、
そこに「タイプT性格」(どの分類法に基づくものかは不明)と呼ばれる自身の性格が合わさって起こるとされている。
その「タイプT性格」は次の六つの根本的欲求に起因しているそうだ。
①完璧でありたい
②人に良く思われたい
③見捨てられたくない
④満足したい
⑤強靭な肉体でありたい
⑥死にたくない
これら六つの欲求は誰もが多少なりとも持っている欲求であるが、それが無意識のうちに強くなっている人は怒りをためやすいという。
それが前述の「日常生活での怒り」や「幼少時期のトラウマからくる怒り」と相まって腰痛を引き起こすとされている。
東洋医学では「怒り」や「筋」は肝に配当されている。
そして、自分が腰痛を治療する際、6~7割ぐらいは肝および肝と関連の深い経絡、経穴を使う。
そのあたり、TMS理論との共通性があるのかもしれない。
上記までが「怒りが引き起こす病気」だとすれば、ここからは「病気が引き起こす怒り」である。
〇日照不足でキレやすくなる
欧米、北欧などで冬季に起きる冬季型うつ病(SAD)は日照時間が短いことが原因だと言われている。
日照時間が短いと朝日を浴びることが少なくなり、メロトニンやセロトニンの減少がうつを引き起こすのである。
それでも気分の落ち込み程度で済んでいれば問題はないが、重症化してくるとイライラしてきたり、過食を引き起こしたりする。
〇「否定型うつ病」だとキレやすい
従来の「うつ病」の症状としては、憂鬱な気分や無気力といった症状とともに食欲不振、不眠などのものがあった。
この「否定型うつ病」は、良いことがあれば気分がよくなり、わがままと思えるほど気分が高揚したりするが、悪いことがあれば強く落ち込むなどの気分反応性が強く、過食、過眠が特徴である。
感情が非常に敏感になるため、ちょっとした非難の言葉やプライドを傷つけられるような言葉には激しく、逆ギレするなど病的に反応する。
いわゆる「怒り発作」を起こすケースでは大声で叫んだり、体を震わせ相手を非難したり、手当たり次第に物を壊すなど手が付けられなくなる場合もある。
〇発達障害でもキレやすくなる
感情が表に出やすい発達障害としては、以前に取り上げたアスペルガー症候群や、注意欠陥・多動性障害(ADHD)がある。
これらの障害は相手の気持ちを汲み取ることができないので、周囲とのコミュニケーションに支障をきたしやすい。
この場合は脳の器質的な問題であり、本人の努力次第やしつけで治るものではなく、服薬等の治療が必要になる。
〇境界性人格(パーソナリティー)障害
具体的な症状としては性的放縦、ギャンブルなどの浪費、薬物乱用などの衝動的行為や、摂食障害、自己破壊的行為(最重は自殺)等々がある。
感情の目まぐるしい変化があり、表に出るのは「怒り」だが、その内には虚しさ、寂しさ、見捨てられ感、自己否定感など様々な感情が内在しているという。
それら混在する感情のコントロールが難しく、不安や葛藤を自身の中で処理することが難しいのである。
〇キレやすい性格・体質
脳の最も前方に位置する前頭前野が未発達であるとキレやすいと言われている。
前頭前野は物事全体を把握して欲望や感情を抑える働きをしているので、ここが未発達であると欲望や感情の抑制が効きにくくなるからである。
脳も使えば使うほど発達するが、使わなければ発達しない。
脳の中でも最後に発達し、十代の終わりまで発達し続けるという前頭前野。
その間にどれだけ自分の感情のコントロールの仕方を鍛えられるかということだろう。
過去にキレることで状況が変わった経験を積めば積むほどフラストレーション耐性は低く、キレやすくなる。
なので、DVを受けた場合に、耐えしのいでいてもDVを助長するだけで、解決には遠ざかるだけだと理解したほうがいいだろう。
このような人は東洋医学的には「肝体質」だろう。
これは肝が弱いのではなく、肝の力が強い場合である。
体格はがっしりしており、青く浮く血管、眉間の縦ジワ、目の充血などを自覚する人は要注意かも。
〇一般的にキレやすくなる条件
①十分に食事を摂っていない(空腹によるイライラ)
②カルシウムが不足している(カルシウムには神経の興奮を抑える作用あり)
③ジャンクフードの食べ過ぎ(カルシウムの吸収を抑えるリン酸が多く含まれる)
④甘いものの食べ過ぎ(インシュリンの過剰分泌は低血糖を起こし、体は低血糖を起こさぬようアドレナリンを分泌し、精神的な不安定を招くようになる)
⑤生活習慣の乱れ(セロトニン減少)
⑥ゲーム・スマホへの依存(深い疲労はセロトニンが減少しやすく、理性のストッパーが効きにくくなる)
⑦親の過剰な期待(ストレス)
⑧運動不足(セロトニン不足、ストレス発散の場がなくなる)
⑨家庭との不和・暴力、育児放棄
⑩友人との不和、いじめ
⑪反抗期
もし自覚できるものがあり、自分の性格を変えたいと願う人がいるとしたら、まずは食生活や生活習慣を見直し、運動を始めるところからトライしてみてはいかがだろうか。
実に多くの病気が「怒り」を引き起こしやすくさせているし、「怒り」も病を引き起こすようである。
「怒り」は心理学的に防御作用だと言われる。
肉体的な生命の危機だけではなく、名誉やアイデンティティーの危機に対してもこの防御作用は起こる。
非常に恐ろしく、厄介で、対応が難しい感情だが、人が生きていくうえで、とても大切な感情でもある。
しかし、少なくとも「怒り」によって導かれる病だけは防ぎたい。
上手にコントロールしていきたいと思う。
ちなみに自分、一人で運転しているときは、かなり口が悪い。
これである程度のストレス発散になればいいかなとは思うが、あまり人には聞かせられない(笑)。
それにしても、
「ストレスに耐えられる性格」ではなく、
「ストレスをあまり感じない鷹揚な性格」になりたいと思うが、
これは持って生まれた性格だろうか、なかなかに難しい…。

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