口腔崩壊
2018/11/28
初めてこの「口腔崩壊」という言葉を聞いたときには何のことか全くわからなかった。
怪我か、病気で口の中が壊れてしまったのかと。
しかし、これは病気には違いないが、極めて社会的要素の強い疾患である。
あるサイトでの「口腔崩壊」の説明では、
「明確な定義はないが、10本以上の虫歯や、歯根しかないような未処置の歯が何本もあり、食べ物をうまく噛めない状態を指す。栄養状態が悪くなり、身体の成長やあごの発達などに影響する恐れがある。歯科を受診できない背景として貧困問題との関連からも注目され始めている」
とされている。
この「口腔崩壊」を生み出している背景には貧困やブラック企業の存在が見え隠れしているのである。
ますます広がる格差社会の中で、貧困問題はどんどん大きくなっていく一方だが、特にそれが如実に表れるのが健康問題である。
これまでは癌などの重い病気にかかっても、受診する余裕がないために手遅れになり命を落とすケースなどが報告されていた。
この「口腔崩壊」は、その貧困問題が子供の歯にどれほど大きな影響を与えるかを示すものである。
百聞は一見に如かずというので、「口腔崩壊」がどのような状態なのかを画像で見ていただくのが手っ取り早いと思う。
だが、正直言って衝撃的な画像である。
覚悟のうえで、それでも是非ご覧になってほしいと思う。
今、この国の子供たちの口の中に何が起きているのか、現実を直視する責任が大人にはあるからである。
「口腔崩壊」と検索するだけで画像は出てくる。
または下記のサイトで詳しく報じられているので、そちらをぜひご覧頂きたい。
沖縄では子供の虫歯有病率が全国水準で最悪だそうで、その中で「口腔崩壊」状態の子供たちの存在が浮き彫りになっている。
主食はパンやラーメン、コーラが主で、長女や男児が近所の弁当屋の「お手伝い」をして売れ残りをもらうような生活実態もある。
また、そのような口腔崩壊になると、白米でさえ「硬く」感じるようになるという。
大阪の歯科保険医協会が行ったアンケート調査でも「口腔崩壊」状態の子供の存在が数多く報告されている。
経済的理由やネグレクトにより、虫歯の治療ができずに歯が抜けるに任せていたり、抜歯するほかない状態になり、噛み合わせも悪くなる。
罹患者には貧困家庭の子供やその親、不規則な生活をする若者などに多いという。
子に対する親の意識の低さ、親自身に歯磨きや虫歯治療の習慣がない世代間連鎖なども原因となっているとのこと。
口腔崩壊によって、その後どのようなことが起きるのか。
前歯がほとんど溶けて無いため、見栄えの問題もあり、マスクが手放せなくなる子がいる。
また、虫歯で物が噛めないために、給食を満足に食べられない子もいるのだとか。
そうなると、更なる栄養状態の悪化、集中力の低下、そして学習意欲・能力の低下、と続いていくのが容易に想像できる。
子供の貧困問題は
「単に進学問題だけに矮小化してはならず、家庭全体の貧困問題の解決でなければならない」
と言われる理由は、これらの事実が指し示している。
最近は「経済格差」だけでなく「健康格差」という言葉も使われているが、今後、更なる健康格差の広がりが懸念される。
子供の歯の状態は、全体的にみると良くなってきているという。
「8020運動」が進められている中で、その成果は着実に出ているのだろう。
そんな中ですら「口腔崩壊」が生まれる現状があるのだ。
我々大人はその事実を強く認識し、根本的な解決には「経済格差の解消」が最も有効であることを改めて認識しなくてはならない。
格差が開き続けているのは経済だけでなく、健康にも現れているのでだ。
一方で、貧困だけが「口腔崩壊」を生んでいるわけでもない。
「不規則な生活をする若者」にも起きやすいと先述したが、それは何も自堕落な生活をつづける若者ということではない。
ある十代の女性は、高校時代から親元を離れ、飲食店でのアルバイトで週に70時間近く、長いときには1日17時間も働く状態だった。
歯科を受診した時には舌に苔のようなものが生えた状態だったという。
これは口腔内で真菌が増殖したことによるもので、疲労やストレス、不規則な生活も口腔状態の悪化を招く原因となっている。
このように、経済的だけでなく、時間的にも受診する余裕がなくなることも要因の一つとも言われている。
日本では歯科検診は高校を卒業すると無くなる。
企業で行っているところもあるそうだが、その数は極めて少ないという。
日本では一般的に健康診断は広く行われ、補助も給付されているが、こと歯に関してはいわゆる「自己責任」とされている。
一方、スウェーデンなど北欧では歯に関しても成人までの健診と治療が無料で行われ、予防教育も徹底されるなど口腔内の健康は「国と社会の責任」という考え方が定着しているという。
北欧で何か事件が起きた時や、消費税が高い実態などを
「パヨクが理想とする北欧の実態」
などと揶揄する輩もいるが、健康面での不安や老後の心配せずに生きていける社会は、それだけで本当に価値ある社会ではないだろうか。
「子供の貧困問題」が社会的に注目される中で、安倍首相としても無視せざるを得ない状況となっており、対策を打ち出そうとはしている。
しかし、経済格差を「勝ち組、負け組」と、あたかも個人の努力の問題に矮小化しているうちは根本的な解決にはならない。
「子供の貧困問題」は単に進学費用の問題だけではないからだ。
日本のように数々の保険があっても実態に見合わず、貯蓄に精を出さなければならないのは、なんとも悲しいことである。
それでもそれなりに貯蓄できる人はまだ幸せである。
貯蓄どころか日々の生活を送ることに汲々とせざるを得ない人々がいる。
国の施策で大企業や金持ちが優遇される中で、経済格差が広がっている以上、国の施策で経済格差を縮ませることは出来るはず。
「口腔崩壊」の子供たちを無くすためにも本当に経済格差をなくしてほしい。
心からそう思う。
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