おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

ワールデンブルグ症候群

2021/04/05

人によっては「妖精の顔」と表現し、心無い人は「エイリアン」などと揶揄する人もいるようだ。

確かに個性的ではあるかもしれないけれども、「エイリアン」などという表現は全く当たらず、逆に化粧等によっては非常に魅力的で、憧れさえも感じられる、そんな特徴を持つ疾患である。
本疾患は脊椎動物に見られる「神経堤(しんけいてい)」という構造物に異常があるために発症する遺伝子疾患である。

1951年にオランダの眼科医により報告され、その名がついた。

ⅠからⅣまでのタイプがあり、Ⅰ・Ⅱは一般的だが、Ⅲ・Ⅳは珍しく、全体としては42000人に1人、先天性聴覚障害を持つ人の30人に1人(2~5%)が本疾患とのことである。

人種や男女差はないそうだが、症状が多岐にわたるために正確な統計を取ることが難しいと言われている。

特徴を列挙すると、

〇虹彩の色が青~青白く、左右の虹彩の色が異なるか、一つの虹彩が二つの異なる色を有する(虹彩異色症)

〇白毛症(前髪だけだったり、全体として白髪になっていたりする)

〇鼻根の突出により、目が離れた顔貌(眼角離開・・・タイプⅠに多い)

〇頭部の生え際が低く(頭髪低位)、眉が中央まで及ぶ

〇一部の患者は皮膚が一部白くなる

〇腕の異常(タイプⅢ)

〇神経障害(タイプⅣ)

本疾患であることをカミングアウトし、YouTubeにてメッセージを発信している方が居る。

カナダのステッフ・サンジャティさんである。

ぜひ下記から見てみて欲しい。

非常に魅力的な女性である。



彼女が子供の頃は前述のように「エイリアン」などと揶揄され、ひどい言葉を投げつけられたという。

また片方の聴力がないので、教室などの広い場所では音が聞き取りにくく、苦労をしたとも。

しかし、大きくなるにしたがって、それらを個性として捉えることができるようになり、上手にメイクを施すことで自信がついたという。

そして、動画を発信することで理解者やファンなども得るようになり、「妖精」や「X-MEN」みたいでかっこいいなどのコメントを受け取っているとのこと。

動画をご覧のように彼女の場合は非常に魅力的な容貌ではあるが、本疾患は身体的に機能障害も併せ持つ場合がある。

手や足に軽度の奇形を伴う場合がある。

聴力障害も両耳が聞こえないケース、片耳だけ聞こえないケース、音の種類(高い音など)によって聞こえないケースと、様々なケースがある。

また、他の先天性障害(腸や脊髄の欠損、先天性肩甲骨高位、口唇口蓋裂)を伴うこともあるという。

さらには、ヒルシュスプリング病という消化管の蠕動運動を司る神経叢の欠如によって腸閉塞様の症状を呈する疾患を併発する場合もあるとか。

ヒルシュスプリング病は新生児・乳児期から腸閉塞のような症状が出るため、その治療として手術を余儀なくされるとか、場合によっては人工肛門を造設することもあるという。

本人にとっては見た目の問題も大きいかもしれないが、それだけではなく、内部疾患を伴うこともあるれっきとした病気なのである。

遺伝子疾患のため、サンジャティさんの一族には多くのワールデンブルグ症候群患者がいて、皆そっくりの顔をしているそうだ。

ちなみに彼女は自己同一性障害も抱えており、二重のハンディを持っている。

彼女の発信によって、同じ疾患に悩む多くの人たちが励まされているだろうと言われている。

実は、ワールデンブルグ症候群は人間だけに起きる病気ではなく、フェレットにも多いのだそうだ。

この病気のフェレットは頭が白いか、小さな白い縞があり、正常な個体よりも幾分頭が平たくなるのだそうだ。

やはり聴覚に問題があることが多いのだが、その見た目のエキゾチックさから逆に人気が高いという。

病気を抱えているにも関わらず、その見た目で好まれるとはなんとも皮肉な話だが、そのような個体は野生では生き残りにくいだろうから、ペットとして飼われるのも生きる道かも知れない。

ちなみに、虹彩異色症といえば、猫の「オッドアイ」が思い浮かばれるが、もちろん人間にもその症状は現れ、日本の著名人には奥菜恵さんなどの名前が挙がっている。

虹彩異色症はワールデンブルグ症候群の特徴の一つではあるが、虹彩異色症だからといって、ワールデンブルグ症候群ではない。

是非ともお間違えのないようにお願いしたい。

美醜の感覚は人によって様々であるが、自分のように世俗的な人間はどうも見た目に左右されてしまいがちである。

しかし、美しく魅力的に見えても見えないところで大きな悩みを抱えているかもしれない。

異質的に見えていたとしても精神まで異質というわけではない。

強面のオヤジが妙にスイーツ好きだったりもする(笑)。

見た目に左右されず、ありのままを受け入れられる人間になりたいものである。

そのような人は非常に他人を癒すことができる。

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