ロコモチャレンジ
2021/03/22
はじめて「ロコモ度テスト」なる評価法を聞いたのは8~9年前にもなるだろうか。
ある診療所で患者さんの運動機能を評価する仕事をしていた。
その頃、日本整形外科学会が新たに提唱しはじめたばかりの「ロコモチャレンジ」という概念を偶然知った。
「ロコモ」とは当然ながらハワイ料理の「ロコモコ」ではない。
「ロコモティブシンドローム」の略で、「立つ」「歩く」といった移動機能が低下している状態のことを指す。
最近はTVのCMなどでも紹介されているので、ご存じの方もおられるかもしれない。
自分が病院勤めをしていた頃、運動機能をはかる際、数値化できる評価としては歩行分析としてスピードや歩数・歩幅などを計るとか、機械によるバランス能力の評価とか、運動負荷試験による心拍機能の評価などが行われていた。
しかし、機械を必要とする評価は時間と手間と施設が必要なため、日常的に手軽に行える評価としては歩行分析ぐらいなものだった。
その他、身体機能に障害を持った患者さんの評価としては、数値化がなかなかできないが様々な動作パターンを理学療法士が分析し、文章化するという方法だった。
そのため、その評価内容には分析する理学療法士の力量も関わっていた。
つまり、簡易検査として、その人の運動能力を数値化できる統一した基準というものはまだ作られていなかったのである。
そんな分析する者の能力に大きく影響受けていた運動機能評価に、数値化を取り入れることで客観性をもたせ、一般の方々にも分かりやすくし、生活や運動指導の説得力を向上させたのが「ロコモ」の度合いを測る「ロコモ度テスト」である。
「ロコモ度テスト」で自分の移動能力を知るだけでなく、その向上のためにどのような運動が必要かを指導し、国民の移動能力の維持・向上に努めようというのが「ロコモチャレンジ」の概念である。
ロコモ度テストは以下の三つで構成されている。
詳しい方法や注意事項は以下のサイトでご確認いただきたい。
https://locomo-joa.jp/check/test/
① 立ち上がりテスト
これは40cm・30cm・20cm・10cmそれぞれの高さの台から両脚あるいは片脚で立ち上がることができるかどうかで、自分が年齢相応の脚力とバランス能力を持っているかどうかを測るものである。まず、40cm台から両脚で立ち上がり3秒間保持できれば、これはクリアということになる。それがクリアしたら今度は片脚で立ち上がり、また3秒間保持できればクリアとなる。左右それぞれクリアできれば30cm台へとレベルアップしていく。各高さでの難易度は、両脚40cm < 両脚30cm < 両脚20cm < 両脚10cm < 片脚40cm < 片脚30cm < 片脚20cm < 片脚10cm という順序になる。
② 2ステップテスト
スタートラインに立ち、そこからできるだけ大きく2歩踏み出す。
これで脚力、バランス、柔軟性が測られる。
2歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値 という計算式で値を出す。
③ ロコモ25
身体状況や生活動作などについて25個の質問に、それぞれ5段階のどれに当たるかを答え、その点数の合計を出す。
身体状況は各部位の痛みの有無を確認し、生活動作は寝起きなどの基本動作から衣服の着脱、スポーツや社会参加に至るまでの総合的な生活全般についての質問がある。
具体的な質問内容は以下を参照いただきたい。
https://locomo-joa.jp/check/test/locomo25.html
ロコモ度テストは何も高齢者で身体能力が低下してきた人のためだけのテストではない。
日本整形外科学会のサイトを見ると、最近のロコモ度テストは以前の物と比べ判定基準が少々変更されているようである。
しかし、以前の判定基準では、例えば「立ち上がりテストで男性の20才代では20cm台から片脚で立ち上がれる」となっていた。
少々難易度が高めの印象もあったが、幅広い年代の能力判定が非常にわかりやすかった。
ただ、やはり難易度が少々高かったせいなのか、現在の判定基準は少し緩やかになったようである。
立ち上がりテストの場合、すべての高さの台が揃っているお宅などそうそうないと思われるので、身の回りのもので代用し、少々の誤差があったとしても、大まかな身体能力を自覚するつもりで行えば何の問題もないと思う。
さすがに片脚で立ち上がる動作や大きな2ステップはバランスも崩しやすいので、特に高齢者の場合はどなたかと一緒に計測される方がいいだろう。
また、それらの動作時に膝や腰などに痛みのある場合は無理にやらない方が良い。
ちなみに自分だと当時は30cm台からの片脚立ちがどうにかできたが、現在では全く自信はない(苦笑)。
上記の三つのテストによってロコモ度を判定したあとはロコモ改善に向けた「ロコトレ」が提唱されている。
内容は片脚立ち1分×1日3回(身体能力に合わせて指先だけでつかまるとか、あるいは両手で支えるなど調整する)や、スクワット5~6回×1日3回、つま先立ちなどである。
片脚立ち、スクワット、つま先立ちはバランスを崩さないように支え方の工夫をするだけで負荷を増減させることができ、道具もいらずに場所も取らない内容になっている。
やはりスクワットはどの健康法でも推奨される有効な運動のようだ。
具体的な方法は下記を参照いただきたい。
https://locomo-joa.jp/check/locotre/
普段、家と治療院の往復は車なので、ここ数年の自分の運動範囲は家の中だけにとどまっている。
朝のトレーニングも行わなくなって数年になる。
最近、顕著に自分の筋力、バランス能力の低下を実感している。
これまで患者さんに勧めてきた「ロコモチャレンジ」を自分自身が真剣にやらなければならないようだ。
ぜひあなたもご一緒にどうですか?
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