おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

ミオスタチン関連筋肥大

2017/10/04

あなたも筋肉が異常に発達した少年の写真や映像をご覧になったことがあるだろうか。
ネットを検索すると、複数の子供の事例が見つかるが、彼らは「ミオスタチン」という名の、筋肉の過剰な成長を抑制するタンパク質が欠乏しているか、あるいはそれに反応しない子達である。
つまり、生まれつき筋肉が発達しやすい体質を持っているため、過剰な努力をすることなしに鍛え抜かれた肉体を手にすることが出来るのだ。
そのことから、マッチョな肉体を手に入れたい人々からはうらやましがられている。
ダブついた腹を持つ私も実はうらやましい(泣)。
アメリカ・ミシガン州に住むリアム君もその一人である。
彼は生後二日にして体を支えられると自分の足で立つことが出来たそうな(アンビリバボー!)。
生後5か月で十字懸垂(体操の吊り輪で、両手を水平に保ちながら体を支えた姿勢)をし、
8か月で懸垂、
9か月で階段昇降、
1歳7か月で逆さにぶら下がった状態から腹筋運動を行ったという。
まさに脅威の身体能力である。
本当に驚きだ。
それほどまでに驚異的な肉体を持っていたリアム君だが、1歳半までは心臓に小さな穴、腎臓腫大、アトピー、乳糖不耐症、胃食道逆流症などの病を抱えていたという。
虚弱体質だったのだ。
もっとも、心臓の穴、腎臓腫大は数か月で、胃食道逆流症は1歳半までにそれぞれ自然治癒したというのだからそれまた驚きである。
腎臓腫大の完治についてはよくわからないが、心臓はそもそも筋肉の塊だし、胃と食道の間にある噴門の開閉は下部食道括約筋という筋肉で行われていることを考えると、もしかしたらリアム君は彼自身の体質でそれらの病気を克服したのかもしれない。
そんな驚異の肉体を持つ彼らだが、ミオスタチン関連筋肉肥大というのは一つの病気である。
ミオスタチンの欠乏度合いによって重症度が変わってくる。
なので、重症な人だとやはり疾患としてのデメリットがある。
そもそも何故人間の体には「ミオスタチン」という物質が必要なのだろうか。
よく、ダイエットの話題の時に「筋トレで筋肉をつけて代謝を上げると良い」と言われるが、それだけ筋肉はエネルギー消費が高いのである。
つまり、逆に筋肉量の多い肉体だとその分摂取エネルギーも余計に必要となるため、非常に効率の悪い身体となってしまうのだ。
だからほどほどの筋肉量に保つことが人間にとって必要なのである。
そういう意味ではミオスタチンは
「筋肉の成長を抑制する物質」ではなく、
「筋肉の成長を正常に保つ物質」とも言える。
筋肉によって摂取エネルギーが使い果たされる彼らは体脂肪が極端に低くなる。
何かと目の敵にされがちな体脂肪だが(私も目の敵にしている(笑))、体脂肪は単にエネルギーとしての役割だけでなく、細胞やホルモンの構成成分としても必要な物質である。
特に乳幼児期には体脂肪が少ないと成長が阻害され、場合によっては中枢神経系の損傷される危険性もあるのだ。
そういう意味では、医者のコメントはないけれどもリアム君が抱えるアトピーや乳糖不耐症、腎臓肥大なども、もしかしたらミオスタチンがうまく働かないことに遠因があるのかもしれない。
事実、前述のリアム君は1歳の時点で10Kgと、アメリカの子供の平均を下回る体重しかなかった。
なのに、毎日がもうこれで人生最後の食事かと思われるぐらいにドカ食いしていたという。
しかも1日6回も。
それでも体脂肪がつかないというのはやはり危険な領域と言えるだろう。
もしも古来からミオスタチン関連筋肉肥大の人がいたとしたら、食糧事情に乏しければ生きながらえることが出来なかったはずなので、古来超人と言われた人たちは飢えを知らなかったのかもとも言われている。
また、筋肉の元となる筋サテライト細胞というものがあるが、それらが増殖する際に分裂時に異常をき
たすと、異常な細胞、つまりガン細胞を際限なく増殖させてしまう恐れもあるという。
人の体というのは微妙なところでバランスをとり、リスクを最大限に減らしているということだ。
やはり何事も過ぎたるは何らかのリスクを負うことになるのである。
ところで、このミオスタチン関連筋肉肥大には二つのタイプがある。
遺伝子異常でミオスタチンそのものを生成できないタイプと、ミオスタチン自体は生成するもののそれに反応しないタイプである。
上記のリアム君はこの反応しないタイプなのだそうだ。
世界中で100例ほどしか確認されていないミオスタチン関連筋肉肥大だが、遺伝子異常でミオスタチンを生成できない例は、今のところ確認されているのは1例のみとのことなので、本当に異例中の異例な症例である。
このタイプは筋肉量が常人の2倍ぐらいまで増えるのだとか。
ミオスタチンに反応しないタイプは常人の1.5倍まで増えるという。
いま、「人間では」と書いたが、ミオスタチン関連筋肉肥大は牛やマウス、犬でも確認されており、逆に動物での発見の方が早かったのである。
ベルギーブルー種という牛はもともとほかの牛よりも筋肉量が多いことで知られていたそうだが、1997年に遺伝子を調べたところ、ミオスタチン生成遺伝子に変異があることが分かったのである。
見た目がかなりインパクトのある姿になっており、怖いもの見たさの人は牛なら「ベルギーブルー種」、犬なら「ウィペット種のウェンディ」という名の犬の画像が出回っているので、検索してみるといいだろう。
ちなみに、人のミオスタチン関連筋肉肥大が確認されたのは2000年ということなので、学術的に認知されたのはまだ最近ということだ。
これらの発見は筋ジストロフィーや骨粗しょう症など組織が消耗していく疾患の新しい治療法の発見に役立つのではと期待される一方、スポーツ界でも注目されつつある。
症例として確認されているのは100例ほどと上記したが、調べていけばアスリートの中にはもっといるのではないかとも言われている。
そして、悲しいことにおそらく軍事目的での利用も検討されることになるだろうとも言われている。
「戦うこと」は時に発展を促すエネルギーのもとになるけれども、何かと言うとすぐに軍事利用に結び付けられるというのは何とも悲しい。
病気と体質との境目がはっきりとしないこの疾患。
「軽度のミオスタチン関連筋肉肥大になりたい」とひそかに願う人は多いに違いない。
自分もそのひとりである(困ったものだ(苦笑))。

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