ブルセラ症
2025/12/09
数年前に世界中で猛威を振るった新型コロナは、現在ではその感染力や重症度は減弱されたものの、今だ一医療機関当たり週に1.44人の患者数で、岩手県に関しては2.76人と全国平均の2倍近い患者数となっている。
まだ収束されてはいないのだ。
新型コロナは一説には蝙蝠から感染が広がったのではないかと言われていた。
同じコロナでもSARSはハクビシン等、MARSはヒトコブラクダから感染が広がったことが分かっている。
いずれにしろある時点では特定の動物だけが罹る病気だと思われていても、いつ突然変異で人にも感染するようになるかもわからないだ。
ちなみに、その後、新型コロナの感染源動物が確定されたのかどうかの情報は持ち合わせていないが、ヒトからイヌ、ネコ、ミンク、ライオン、トラへの感染は確認されているとのことで、動物にとっては逆にヒトの存在が脅威となりうるということも忘れてはならない。
このように人獣間の感染症は非常に厄介な事態を引き起こすが、今回取り上げるブルセラ症も人獣間感染を起こす疾患で、その歴史は古く紀元前400年ごろのヒポクラテス著の本にブルセラ症と思われる疾患が既に記載されていたという。
あまり我々にはなじみのない疾患名ではあるが、現在でも特に食料や社会・経済面で家畜への依存度が強く、家畜ブルセラ症を発生している国や地域に、多くの患者が発生している。
一口にブルセラ症と言っても、コロナに様々なタイプがあるようにいろいろあるらしい。
ヒトへの感染が報告されている主要なものは、宿主となる動物別にみると
①ヤギ・ヒツジ
②ブタ
③ウシ
④イヌ
の4菌種が挙げられる。
また、数は少ないがクジラ・イルカあるいはアザラシなど海洋動物由来のものもあり、必ずしも陸上に住む動物だけから感染するわけではないようである。
国、地域別にみると中国、南アジア、中東、地中海地域、アフリカ、中南米を中心として世界中で毎年50万人以上もの患者が発生しているという。
日本でも過去に牛のブルセラ症が広がったことがあるらしいが、徹底した管理により、1970年を最後に国内でブルセラ菌は出ていないそうだ。
ブタも1940年以降は出ておらず、現在国内における家畜由来のヒトのブルセラ症はすべて輸入症例とのこと。
ただし、イヌ由来のブルセラ症についてはイヌの約3%が感染歴を持つとされており、この感染例は国内感染なのだそうだ。
愛犬家は注意をした方がいいだろう。
では具体的にどのような症状なのか。
潜伏期間は通常1~3週間だが、数か月に及ぶこともある。
主な症状は不明熱(原因不明の38℃以上の熱が数週間続く)で、倦怠感、疼痛、悪寒、頭痛、発汗、食欲不振などが伴う。
腰背部痛などの筋骨格系の症状が出ることが多く、脾腫や肝腫を呈することもある。
発熱は午後から夕方にかけて、時に40度以上となるが、発汗とともに朝方には解熱するという間欠熱が数週間続いた後に、一時の軽快を経て再び間欠熱を繰り返すという何とも厄介な症状のようである。
当初はインフルエンザにも似た症状でもあり、数か月に及ぶ潜伏期間となった場合、もし動物との接触が一時的なものだとすれば原因に思い至ることはかなり難しいのではなかろうか。
仙腸骨炎などの骨関節症状や肺炎、胃腸症状、ブドウ膜炎、まれに脳炎、髄内膜炎等の中枢神経障害や心内膜炎、骨髄炎なども合併症として起きる。
男性の場合は精巣炎や副精巣炎も認められ、妊娠中の女性の場合は流産などの重篤な症状を生じることもあるので、注意が必要である。
治療しない場合の致死率は5%とのこと。
ただし、イヌ由来のブルセラ症の場合は一般的に症状が軽く、感染に気が付かないことも多いという。
3%のイヌに感染歴があるとされる割にあまり取りざたされないのはそうした理由かもしれない。
しかし、濃厚接触の場合は家畜ブルセラ症のような急性症状を起こすらしいので、やはり過度な接触は避けた方がいいようだ。
治療は抗菌薬の2~3剤の併用による。
未治療時の致死率が5%ということで、決して侮ってはいけない数字ではあるが、主症状である波状に訪れる間欠熱を放置しておかず、きちんと治療さえすれば恐れる必要のない病気のようである。
私たち人間にとって、家畜やペットは未来永劫切り離せない存在である。
それだけに付き合い方というものを常に頭の片隅に置いておく必要があるかもしれない。
余談だが、ブルセラ菌は敵国の兵士や住民に罹患させて能力を低下させる生物兵器として研究され、アメリカは1942年、ソ連は1978年に兵器化が実現したのだそうだ。
また、2019年には中国甘粛省蘭州市にある動物用のブルセラ症ワクチン工場から滅菌不十分な排気が流出し、周辺住民2万人余りに検査をしたところ3245人が感染していたという。
現在の新型コロナも研究施設からの流出だという一説もあるが、当の中国に限らず、愚かしい人間の一面を見るようである。
ところで、最近自分も捕獲後の野良の子猫の世話をさせてもらっている。
保護されてから1週間ほどであり、まだまだ警戒されているが、当初人前ではなかなかえさを食べてくれなかったのが、徐々に目の前でも食べてくれるようになるとうれしくなる。
猫に関してはブルセラ症は心配いらないようではあるが、動物を飼う以上ただただ「かわいい」だけではなく、もろもろの感染症のことも頭の隅に置き、楽しみたいものだ。
早く子猫たちと遊べる日が来ることが楽しみだ。
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