「処方カスケード」と「ポリファーマシー」
2025/12/27
「処方カスケード」という言葉をご存じだろうか。
カスケードとは「小さな連なる滝」を意味している。
処方されたある薬による副作用が新たな病症として誤認され、その治療として別の薬が処方される。
そしてその薬によってまた新たな副作用が別の病症として誤認され…という連鎖があたかも小さな滝の連なりのようであることから生まれた言葉のようである。
一方、「ポリファーマシー」とは、複数の医療機関にかかって、足し算的な処方がなされると、必要以上の薬や不必要な薬が処方されやすくなる。
複数を意味するポリと、調剤のファーマシーからなる語で、「害のある多剤服用」を意味するという。
この「害のある多剤服用」は単純に薬の数が多いということではないそうだが、有害事象を引き起こす事例はやはり数の多さに比例するとされており、薬の数が6種類を超えると発生頻度が大きく増加するという。
もちろん、適正な薬の処方が6種類以上になることもあるし、6種類以下の処方でも有害事象が発生することもあるというので、「処方内容が適正かどうか」が肝心とのこと。
薬の副作用を別の病状と誤認し新たな処方がなされる「処方カスケード」。
複数の医療機関にかかることで足し算的に時に不必要な処方がされることで「害のある多剤服用」をしてしまう「ポリファーマシー」。
どうしてこのようなことが起きるのか。
一つにはすでに症状が安定した、あるいは治癒していて必要となくなった薬が漫然と処方され続け、無意味に服薬し続けることで有害事象が生じることがあるという。
また、処方された薬を患者側がきちんと服用していないにも関わらず、医師がそのような状況を把握できずに処方薬の効果が低いとして増量や処方薬の追加などによるものもあるという。
さらには、複数の医療機関にかかっているケースで、かかりつけ薬局やお薬手帳がうまく活用されていない場合に起こりやすいとのこと。
高齢化に伴い複数の医療機関に通っている人の割合は増え、シニア世代では半数以上が2か所以上の医療機関に通っている。
また、認知機能の問題などで服用の仕方に問題も生じやすい。
あるいは加齢に伴う生理的な変化によって一般成人よりも薬物への反応や効果の度合いが異なることも有害事象を引き起こす原因となりやすい。
症状としては軽いめまい、ふらつきから、肝機能障害や低血糖を引き起こすもの、果ては死亡に至るものまであるという。
治療のために薬を飲んで死亡するなど本末転倒も甚だしい。
薬の副作用が別の病状と誤認され、新たな薬が処方される事例にはどのようなものがあるだろうか。
あるサイトでは以下のようなケースが挙げられていた。
〇降圧薬による咳に抗菌薬が処方される
〇抗精神病薬による薬剤性パーキンソニズムにパーキンソン病治療薬が処方される
〇認知症治療薬(コリンエステラーゼ阻害薬)による尿失禁に抗コリン薬が処方される
〇鎮痛薬による高血圧に降圧薬が処方される
〇利尿薬による痛風に痛風治療薬が処方される
〇降圧薬や抗菌薬などによる吐き気にメトクロプラミド(吐き気止め)が処方される
〇抗菌薬による不整脈に抗不整脈薬が処方される
〇躁病などの治療薬による薬剤性パーキンソニズムにパーキンソン病治療薬が処方される
〇吐き気止め)による薬剤性パーキンソニズムにパーキンソン病治療薬が処方される
もちろん、薬の素人が注意を促すまでもなく多くの医者や薬剤師の方々はそうしたことも念頭に置いて処方されているだろうが、現実に「長年飲み続けた多くの薬をやめたらシャキッとして元気になった」人がいるのも事実である。
素人ではあるが、何らかの服薬をしている人に何かの症状が出た場合、医者や薬剤師に「これは薬の副作用でしょうか?」と一言尋ねるだけでも防止策になるのではないだろうか。
薬が体にとって基本的に異物であることは間違いない。
正しい使い方で上手に健康を維持していきたいものである。
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