ファブリー病
2018/01/15
私たちの体の細胞は、生きていくための成分やエネルギーを毎日生み出す一方で、いらなくなった物質も分解・排出する。
その分解・排出する細胞の中にある小さな器官がライソゾームである(リソゾームあるいはリソソームとも呼ばれる)。
その数ある中で、今回はファブリー病を紹介したい。
ファブリー病は「α-ガラクトシダーゼ」という酵素の働きが悪いために起きる病気である。
四肢疼痛
手足に強く、焼けるような、急激な痛みが生じ、数分から数時間持続する。これは「ファブリー発作」とも呼ばれる特徴的な発作である。毎日起きることもあり、発熱を伴うこともある。
また、触覚が鈍くなる・痺れる・チクチクするなどの感覚異常が起きることもある。
これらはストレスや気温・体温の変化、あるいは疲労などで引き起こされる。幼・小児期に出現することが多い。
聴覚低下
耳の神経が障害を受け、耳が聞こえにくい、耳鳴りがするなどの症状があらわれる。
角膜混濁
角膜に渦巻き状の混濁が現れる。
幼児期に出現することが多く、一般的には視力に影響はないと言われている。
他に結膜や網膜の血管の病変、水晶体の混濁などが認められる。
被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)
胸から膝まで、特にお腹やおしり、陰部に赤いツブツブが出現する。
小児期より出現するが、これ自体には痛みやかゆみはない。
低・無汗症
発汗機能の障害が起き、皮膚が乾燥し、暑くても汗をかきにくくなる。
汗が出ないので体温調節ができず、真夏には熱がこもり易く、立ちくらみ、便秘、下痢、吐き気などが見られる。いわゆる熱中症を起こしやすい。幼児期より出現する。
胃腸症状
食後の腹痛や下痢、吐き気、嘔吐などが現れる(食中毒に間違えそうだが違うもの)。栄養不足になりやすく、体重が減る。
小児・青年期より出現し、年齢とともに悪化することがある。
腎機能障害
尿中にタンパクが出て、腎不全に至ることもある。重篤な臓器障害である。時に透析や腎移植が必要になる場合もある。
思春期・青年期以降に出現することが多い。
心臓機能障害
心肥大、心筋梗塞、弁膜異常、不整脈などが現れる。これも重篤な臓器障害。
青年期以降に現れる。
脳血管障害
脳梗塞、脳出血を起こし、記憶障害や運動麻痺をきたす場合がある。
中年期以降に出現することが多い。
精神障害
病気のストレスからうつ症状などが見られることがある。
たった一つの酵素の働きが悪くなるだけで、これほど多彩な症状が現れるのである。
基本的に遺伝子疾患ではあるが、両親からの遺伝子を受けたのではなく、突然変異を起こすケースもあるということである。
2013年の福岡大学・熊本大学の研究では有病率は7000人に1人であるという。
治療としては不足している「α-ガラクトシダーゼ」という酵素を補充する「酵素補充療法」が行われ、それによって病気の進行を抑えることが出来るという。
特に幼少期に正確な診断を受けることがその後の人生をかえることになるので、幼少期の症状には本当に注意してあげていただきたいと思う。
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