おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

ビール自動醸造症候群

2017/05/15

もしパスタやおにぎりなど炭水化物を食べただけでビールを飲んだように酔っぱらうことができたら、あなたは嬉しいだろうか?
まあ、手軽に酩酊状態を味わうことができることはできるのだが・・・。

 
2009年アメリカ・テキサス州の病院に61歳の男性がめまいを訴えやってきた。
看護婦が呼気検査をしたところ、この男性の血中アルコール濃度は0.37%だった。
血中アルコール濃度は
0.02~0.04% 爽快期
0.04~0.10% ほろ酔い期
0.10~0.15% 酩酊初期
0.15~0.30% 酩酊期
0.30~0.40% 泥酔期
0.40~0.50% こん睡期
となっているで、男性は泥酔期にあたり、かなり飲酒したものと思われた。
仮に体重70Kgで計算すると、ビール350ml缶を12~13本は飲んだ計算になる。
ところが彼はその日一滴もアルコールを飲んでいないというのである。

 

 

何人かの専門家は彼が隠れて飲酒しているのだろうと考えたが、テキサス州の胃腸病学者のジャスティン・マッカーシー博士らは事態の解明にのぞんだ。
まず、調査チームは彼の携帯品を調べてから病室の一室に24時間隔離した。
そして、男性が炭水化物を摂取した後に血中アルコール濃度を調べたら、なんと0.12%にまで上昇したというのである。
それによって男性の腸内では酵母過多が生じていると結論付けられた。
男性は出芽酵母(イースト)に感染しており、炭水化物を摂取すると酵母が糖をアルコールに変えるため、結果的に食事をするだけで酔っぱらっていたというのがことに真相である。
実はこの男性、2004年に足の骨折で入院した際に抗生物質を使用しており、それで腸内細菌叢が崩壊し、同じタイミングで生きた酵母を摂取したために腸内でイーストが繁殖する結果となったものと考えられた。
一般的にイースト菌は病原菌とはみなされておらず、乳酸菌飲料と同じ感覚で毎日服用しておられる方もいるそうで、無濾過の地ビールにも使われている。
しかし、ある種のイースト菌は免疫不全の人や乳児では感染の原因にもなるということなので、この病気は誰もが起こす可能性ありということのようだ。
実際1970年に日本でもそのような症例のケースがあったという。
また、イースト菌以外でも短腸症候群の13歳の少女やカンジダ菌による同病の発症の例もあるとのこと。
さらに、軽微な症例としては案外珍しくないかもしれないという研究もあるそうだ。
1990年に行われた臨床試験で、510人の61%にブドウ糖摂取後の血中アルコール濃度の上昇が認められたという。
ただし、その値は0.025%というので爽快期の範囲内ではある。
そういえば、ある相談サイトで
「友人がご飯を食べるたびに酔っぱらった感じになります。どう付き合えばいいですか?」
というような相談事をされていた人もいた。
妙にテンションの高い人など、案外このビール自動醸造症候群の人は身近にいるのかもしれない(笑)。

 

 

ちなみに、上記の61歳の男性は低炭水化物の食事でイースト菌のエサを絶った上で、過剰に繁殖しているイースト菌を抗真菌薬で排除したそうだ。
さぞかし、酔から覚めて爽快な気分を味わったことだろう(笑)。

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