ヒル治療法
2019/08/03
あなたはヒル治療法をご存知だろうか。
ヒルはあのナメクジのような軟体動物である。
ヒルは吸血することで有名であり、その性質を活かして瘀血の吸出しに使われることは自分も以前から知っていた。
しかし、調べてみると単に吸い出す効果だけではないようである。
「ヒル治療」の歴史はかなり古く、インドでは紀元前800年頃からおこなわれていたという。
また、ピラミッドの内壁に描かれていたり、中国最古の薬物書「新農本草経」に水蛭(すいてつ:乾燥したヒルの生薬名)の薬物記載があったり、ヒルを医療用に使う文化は世界各地に生まれていたようである。
さらに、現代においてもアメリカFDA(アメリカ食品医薬品局)でも2004年に認可されており、ヨーロッパでも利用されているという。
自分が認識していたヒルの活用法とは下記のサイトにあるような使用法が主なイメージであった。
瘀血の溜まったところにヒルを乗せると吸血し始め、満腹になると自然とポロリと落ちてしまうというものである。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/kanehira/hirutiryou.html
http://blog.kusanonekko.com/?eid=282
ところが、現在では皮膚移植術や再建手術後の皮膚の血行促進に使われるほか、静脈瘤・筋痙攣・血栓性静脈炎・骨関節炎にも使われるとのことである。
ドイツのエッセン・ミッテ病院の医師チームは「ヒルの唾液には炎症を抑える物質や関節炎症状を和らげる化学物質が含まれている」と主張している。
エッセン・ミッテ病院では以下のような実験が行われた。
膝の関節炎患者に対し、4~6匹のヒルを使った1回の治療と、関節炎の治療薬「ジクロフェナク」を28日間投与する治療とを行い、その効果を比較したのである。
ヒルは24名に対し行われ、膝の痛い部分に吸い付かせ、離れるまでの約70分間放置した。
すると、7日後、ヒル治療を行った患者の方が痛みの程度が大きく改善されたという。
また、膝の硬直や関節炎全体の症状の改善に関しても、治療後3か月を通して良好な結果が得られたという。
実際の治療の様子を見ていくと、ヒルに噛まれても痛みはほとんど感じないそうだ。
これは蚊に刺された時と同じように、噛んだ際に鎮痛物質が注入されるからである。
また、同時にヒルディンという抗凝固作用を持つ物質も注入される。
それによって血液が凝固することなく、ヒルはゆっくりと吸血を続けられるのである。
ちなみに、肩こりの治療を受けたある男性の場合、治療後8時間経過して止血用の綿花をはがしてみたところ、ぷくっとまだ出血したとのことである。
翌日になってもスッキリ感が継続していたとのことで、もしかしたら瀉血作用が長く継続することが効果の持続性を保たせているのかもしれない。
日本においても札幌医大、小郡第一病院、東京手の外科センター等多数の病院で1980年代から医療用ヒルが使用されているという。
福島県立歯科大学整形外科では2011年4月より以下のように医療用ヒルが臨床応用されているそうだ。
四肢や手指切断後の再接着術を行った患者、あるいは移植手術を行った患者で、手術部位にうっ血が生じてしまったケースに対し、医療用ヒルによってうっ血を解除し、再接着率や移植編の生存率を向上させるというものである。
現代的な病院の中で、古くからの治療法が行われる様子は何とも不思議な光景である。
ちなみに、一度使ったヒルは弱ってしまい、使いまわしはできないそうで、1回こっきりの使い捨てになるのだとか。
ヒル1匹の値段は200円~3000円と幅があるようである。
無菌で育てる医療用ヒルだと値段は高くなるのかもしれない。
ヒルを使った吸血も「瀉血」とみなされており、「瀉血」は医師法に関わってくるので、一般の方は自分で行う分には構わないが、商売としてはできないことをご注意願いたい。
なお、溶血作用が強いので妊婦、小児等への使用はさらなる注意が必要である。
上述のように、瀉血作用が長時間続くのであれば、本当に気をつけなければならない。
基本的に専門家に相談するのが賢明であろう。
一方、漢方としての水蛭はどうだろうか。
一口にヒルといってもその種類は日本には約60種、世界には450種とも500種を超えるとも言われている。
その中で医療用とされるのはたったの3種類だとか。
ヒルは動物の血液を吸って体内に取り込むと、6~8ヶ月もの時間をかけて消化するのだという。
非常に効率的な栄養摂取である。
その間、取り込んだ血液が固まらずに鮮度を保ち続けさせることができることこそヒルの特殊能力であり、上記で出てきた「ヒルディン」によるものである。
「血液をサラサラにします」とうたう素材が数ある中で、流れをきれいにし、固まりを溶かし、壁の老化を防ぎ、丈夫にする。
これら複合要素を合わせもつ素材はまずないと下記のサイトで述べられている。
ヒルを粉末状にして服用するらしい。
ナットウキナーゼや赤ミミズなどよりも高効果なのだそうだ。
https://www.ebiya.ne.jp/suitetsu
ヒルディンは1904年にイギリスの科学者ジャコビーによって医療用水蛭から抽出され命名された。
ヘパリンが1916年に発見されるまでは唯一の血液抗凝固剤だったとか。
現在では大量の薬理実験を通じて世界で最も有効かつ安全な、天然の凝結抑制酵素剤であると証明され、近い将来心臓や脳に関する血管疾患の治療に用いられ、ペニシリンのように一般に普及すると予測する人もいる。
なんでも「体内循環の申し子」とまで呼ばれているというから、その期待度は半端ではない。
覚えておいて損はないだろう。
それにしてもかつては民間療法として広く行われていた「ヒル治療」や「瀉血治療」。
それを生業にしようとすると、安全性やら西洋医学からの様々な思惑の中で医者にしか「行える権限」は与えられなくなった。
ではその医者はそれらの技術を存分に生かすかというとごく限られた人たちしかやろうとしない。
そもそも教育過程ではそれらを教えられることはないし、根本的に東洋医学を下に見ているからだろう。
そんな中で優れたものが失われていく。
何ともったいないことだろうか。
法律は人間が作るもの。
救急救命士が法律上行えることを増やし救命率を上げたように、鍼灸師にも施術条件を設けても構わないので門戸を広げて、医療文化を残せるようにしてはどうだろうか。
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