ソーラーキッズ!?
2022/06/14
本当にこのような病気(?)は実在するのだろうか。
記事を読むとほかに症例もないことから、どうも病名すら付いていないようである。
果たしてフェイクニュースなのか、実在するものなのか。
自分がこの記事を見たのは数年前だが、その後TV番組でも取り上げられていたようなので病気と言われる兄弟は実在するのだろう。
果たしてその病態とは…。
パキスタンに住む兄弟、ショアイブ・アフメト(13才:2016年当時)とアブドゥル・ラシド(9才:同)は奇妙な症状に悩まされていた。
彼らは、日中は普通に活動できるが、日が落ちると動くことも話すこともできない植物状態になってしまうという。
You tube上では映像時間が短いが「ソーラーキッズ」として紹介されている。
https://www.youtube.com/watch?v=6IzfUJbWZZY
https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=wNvLuORoYV8
ショアイブとアブドゥルは、朝一番の日の光で目覚め、元気いっぱいに日常生活を始める。
それは普通の子供たちと全く変わりがなく、家の雑用もよく手伝い、学校へも通うが、午後遅くになって太陽が西に傾くと体に異変が起きるのだという。
徐々に体が重くなり、そして太陽が沈む頃には完全に体が動かなくなってしまうというのだ。
それは毎日必ず起き、翌日太陽が昇るまでずっとそのままなのだとのこと。
両親によると悪魔祓いの儀式を行ったこともあるというが何の効果もなかったという。
メディアに取り上げられたことをきっかけに専門機関で検査を受けられることになったが、結果は「原因不明」だった。
ふたりは生まれたときからこうしたサイクルの生活を続けており、村の人々は二人のことを「ソーラーキッズ」と呼んでいるという。
父親のムハマド・ハシム氏は「息子たちは太陽光をエネルギー源にしているとしか思えない」と語っている。
しかし、二人を昼間真っ暗な部屋に閉じ込めてみてもこの症状は見られなかったことや、曇りの日や嵐の日でもちゃんと活動できていることから医師たちからその説は否定されている。
経済的に裕福ではない家庭出身の彼らは、現在首都イスラマバードで集中的な治療を受けているという(2016年現在)。
政府は少年たちが無料で治療を受けられるようにしており、彼らの血液サンプルは海外の専門家にも送られ、国内では見つかっていない治療のヒントを探ろうとしている。
パキスタン医科学研究所のジェーブド・アクラム医師は「私たちはこのケースをチャレンジだと捉えていて、なぜ彼らが日中は普通に活動できるのに、日没になると目を開けることも、話すことも、食べることもできなくなってしまうのか、様々な医学的検査を行っている」と語る。
興味深いのはふたりの両親はいとこ同士だということ。
血縁が近いことが少年たちの病気の原因ではないかと考える医師もいる。
実は少年たちは6人兄弟で、そのうち二人は同様の症状で亡くなっており、生き残った女の子には何の症状もないが、1歳(2016年当時)の男の子にも同じ症状が見られるという。
現在、少年たちの病気の原因はまだ全くわからないが、パキスタン医科学研究所で治療を始めて以来、症状にかなりの改善が見られているという。
この体が固まる症状が「パーキンソン病」に似ていると思った医者によってドーパミン作動薬が投与されると、40分後には体の関節が曲げられるようになり、その後歩くことができるようになったという。
そういえば本稿27号で「嗜眠性脳炎」を取り上げた。
これは1910年代に流行った感染症か薬剤性の疾患か不明であるが、発症すると徐々に体を動かせなくなり、最終的には呼びかけにも応答しなくなるという疾患で、この兄弟の夜以降の症状に極めて良く似た症状を呈するものだった。
この疾患もドーパミン作動薬によって一時的に回復が見られた疾患であり、映画「レナードの朝」のもととなったものである。
この兄弟の映像では、動かなくなった少年の手を持ち上げ、掴んだ手を離すと普通に少年の腕は落ちているし、体を抱き抱えた時の状態からは体が硬直状態になっているようには見えないのだが、もしかしたら薬投与後の映像なのかもしれないし、触れてみると普通よりは硬くなった状態を確認できるのかもしれない。
いずれにしろ二人は午後10時くらいまでなら活動を続けられるようになったというから、だいぶ進歩しているのは間違いない。
パーキンソン病は脳の黒質というところから放出されるはずのドーパミンが出なくなることによって神経伝達がうまくいかなくなり、筋肉が硬直してくる病気である。
ふたりの症状とパーキンソン病との関連があるのかどうかはまだ判明していない。
ただ、ドーパミン作動薬が功を奏するということは、ふたりの場合は何らかの原因により、時間帯によってドーパミンが出る量が変化するという特殊なサイクルが身に付いたのかもしれない。
いずれにしろ、功を奏した治療内容にこそ原因究明の鍵はあるのだろうから、ふたりの体に何が起きていたのか、解明される日はそれほど遠くないのではないだろうか。
相変わらず、人の体の神秘は奥が深い。
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