おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

セリアック病

2021/03/15

ラーメン、うどんにスパゲッティ、パン、ピザ、肉まん、天ぷらなど、そんな炭水化物好きな自分にとって、少々脅威を感じる疾患でもある。

セリアック病は小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患である。

欧米での罹患率(りかんりつ)は1%程度とされ、そのため数年前から「グルテンフリー」の食が非常に注目を浴びている。
ちなみに、日本での罹患率は0.05%とも言われているが、食の欧米化が進んでいることや、「セリアック病」の認知度が医者の中でもそれほど高くなく、「過敏性腸症候群」と誤診されているケースもあることから、実際はもっと高くなっているのではないかとも言われている。

本疾患の患者は、グルテンを摂取すると、グルテンを分解しきれず取り込まれ、それがきっかけとなって炎症を起こし、ひいては小腸内の上皮細胞に免疫系の攻撃が向けられるようになる。

そのために小腸からの栄養吸収ができなくなり、栄養失調の状態に陥るのである。

症状は消化器症状としての腹部の痛み、膨満感、慢性の下痢、脂肪便にとどまらず、副次的な鉄欠乏性貧血、骨粗鬆症、糖尿病、無月経、小脳失調症などが挙げられている。

ほかにも関節痛や肝臓・胆道障害、足のしびれ、口内炎、歯のエナメル質欠如・変色、不妊、・流産、等々栄養障害に伴って起きると思われる症状が多岐にわたる。

また、治療を行わないでいると、うつ病やパニック障害、自閉症、ADHD等の行動・精神障害が見られるという報告もある。

実際、患者さんの体験談ではパニック障害や関節痛があったというから、本当に症状は多彩であり、侮ることのできない疾患である(体験談はこちらからhttps://un-gluten.com/panicdisorder)。

原因は近親者にセリアック病患者が見られることから、遺伝的要因が大きいとされている。

しかし、外科手術、妊娠・出産、ウイルス感染、激しいストレスなどが引き金になって発病する場合もあるという。

つまり、誰にでも発病の危険性はあるということである。
症状的には過敏性腸症候群、クローン病、慢性疲労症候群、小麦アレルギー、グルテン不耐性、グルテン過敏症など似たものが多いので、生体検査や遺伝子検査など特殊な検査で弁別が必要である。

特にセリアック病と小麦アレルギー、グルテン不耐性、グルテン過敏症はどう違うのか紛らわしい。

[ セリアック病 ]
グルテンをきっかけに自分の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患。

小腸が直接ダメージを受ける。
[ 小麦アレルギー ]
場合によってはグルテン以外のタンパク質にも過剰反応するアレルギー疾患。

あくまでも攻撃対象はグルテンである。

炎症性のヒスタミンが放出され、症状の現れる時間が数秒から数時間と比較的短い。
[ グルテン不耐性 ]
グルテンを消化する酵素がないためにお腹がゴロゴロしたり、下痢するなどの不快な症状が現れる。

セリアックのテストは陰性。

少量では症状が出ないか、出ても症状は軽い傾向にある。

単にグルテンの消化ができないということ。
[ グルテン過敏症 ]
広義ではセリアック病もグルテン過敏症だが、血液テストではセリアック陽性でも、生体検査(組織検査)ではセリアック陰性のため、非セリアックに分類される。

現在研究が進められている分野とのこと。

原因不明。

しかし、こうして見ると、普段私たちが何気なく食している小麦粉という食材に対して、実に様々な反応を呈していることが分かる。

いずれもグルテンがきっかけとなるので、グルテンフリーにすることで症状が全く出ないか、非常に低く抑えられるようになる(小麦アレルギーの場合は小麦全般を除去する必要あり)。

セリアック病に関しては、根本的な治療はなく、一生涯グルテンフリーの食事をする必要があるという。

傷ついた腸が改善されれば諸症状も改善されるが、それには個人差が大きいようである。

グルテンフリーの食生活に変えることで、2週間程度で改善したケースもあれば、数年かかる人、あるいは完全には改善しない人もいるのだという。

なかなか厄介な病気である。

ちなみに、日常の食生活の中の小麦といえば、なんとあのお醤油にも小麦が使われていることをご存じだろうか。

自分は今回初めて知った。

厚労省のサイトでは「醤油が生成される発酵過程で小麦タンパクは完全に分解される」として、小麦アレルギー患者が摂取しても大丈夫と言っているらしい。

だが、アメリカのアレルギーテストを行う会社の見解では、「検知できないくらいに小さくはなるが、免疫反応を引き起こす性質としては健在なので除去すべき」とされているようである。

体験者も「無自覚のまま身体へのダメージが蓄積されたり、栄養が吸収できない」ことを懸念し、醤油も除去することを勧めていた。

もっとも、「小麦を使わない醤油」というものも売られているようなので、そちらに使用変更すれば何の問題もない。

グルテンそのものは意志を持った生物ではないけれども、ある日突然自分の体の中で反逆し出すことをイメージすると恐ろしい気がする。

幸いにして遺伝子には問題がないようなので、あとは摂取量とストレスを抱えこまないことに注意し、グルテンの怒りを買わないようにしなければ・・・。

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