サイコパス

2023/08/21

アメリカのドラマで「クリミナル・マインド」というものがある。

FBIの行動分析課のメンバーたちが、連続殺人鬼や異常犯罪者の心理や行動を分析し、犯人を追い詰めていくというものだ。

シーズン１５まで作成された人気ドラマである。

事件は主にサイコパス（精神病質者）によって引き起こされていく。

サイコパスとは反社会的人格の一種であるが、似たようなものにソシオパス（社会病質者）というものもあるらしい。

医学的にはどちらも反社会性人格障害にまとめられているが、サイコパスが生まれながらに脳の器質的な問題があって形成される人格なのに対し、ソシオパスは幼少時のトラウマなどが原因で後天的に形成される人格とされている。



「クリミナル・マインド」を見ていてショッキングだったのは、ある放送回でのこと。

男の子が殺され、森に遺棄される事件が起きた。

捜査を進めていくうちに、家族の近親者が遺棄に関わっていたことが明らかになり、疑いの目が向けられた。

しかし、最終的に明らかになった犯人は、これもまだ幼い兄の仕業だったということである。

理由は弟に自分のおもちゃを壊されたからというもの。

事件を知った両親が兄の犯罪であることを隠そうと、近親者に頼んで森に遺棄してもらっていたのだった。

その兄の異常性が明らかになるのは、殺した弟の喉奥におもちゃを押し込んでいたところである。

仮に殺したのが衝動的なものだったとしても、その後に喉奥におもちゃを押し込むという行為は明らかに異常なものである。

その事実を知らされた両親が見たのは、兄の異様な目をした冷たい表情だった、という回である。



やはり、生まれながらの反社会的人格障害というものは存在するようだ。

サイコパスにおける脳の器質的問題とは、偏桃体、前部帯状回、および前頭前皮質などの活動が低下しているところである。

サイコパスは「病気」には分類されていないが、いつの日か治療が可能となる日が来るといいのだが・・・。



アメリカ精神医学会ではサイコパスにしろ、ソシオパスにしろ、下記の特性のうち、３つ以上当てはまると反社会性人格障害であると定義している。

1.　日常的に法を犯す、または法を軽視している

2.　つねに嘘をつき、他者を騙そうとする

3.　衝動的で計画性がない

4.　けんか腰で攻撃的

5.　他者の安全性についてほとんど考慮しない

6.　無責任で、金銭的にルーズ

7.　良心の呵責や罪悪感がない

以上のように、両者の共通点は他者の権利や感情を軽視、あるいは無視し、罪悪感なく人を欺くところにあるが、上記の定義のほかに様々な脳科学者らによってもいろいろな特徴があげられている。

例えば、彼らは一見社交的で、口がうまく、プレゼンテーションも立て板に水という感じで抜群に面白いなど、知的レベルも基本的に高いともいわれる。

実際、ある調査でサイコパスの多い職業トップ１０はCEO、弁護士、テレビやラジオのジャーナリスト、小売業者、外科医、新聞記者、警察官、聖職者、コック、軍人とされており、高学歴と思われる職業が並んでいる（なお、一部には逆に知的レベルは低いとする報告もある）。



また、他人の痛みに共感することもなく、罪の意識を感じない一方で、感情を読み取ることには長けており、言葉の巧みさと相まって、人を騙し、操作し、自分の利益につなげていくこともする。

なので、愛情の細やかな人の良心をくすぐり、餌食にしたりもする。

自己犠牲を美徳としている人ほどサイコパスに目を付けられやすいというので心当たりがある人はくれぐれも注意が必要である。



ところで、そんなサイコパスはどれほどの割合でいるものだろうか。

犯罪者ではないが、そうした気質を持った「マイルド・サイコパス」を含めるかどうかでも変わってくるが、１～数％とされている。

クラスに一人、会社には何人か、という割合である。

男女比は３：１、アメリカでは４％で、東アジアでは０．１％前後との数字もある。

これは東アジアの犯罪率の低さによるものであり、「犯罪歴があること」を規定の条件に入れると低くなってしまう。



マイルド・サイコパスの実態は反映されていないという。

マイルドサイコパスとは、「サイコパス的な脳のつくりを持ちながら、反社会性傾向はなく、攻撃性が社会的に許容される程度（重犯罪を犯さない）」のサイコパスであり、彼らは身近な日常に紛れ込んでいて、社会的に適合・成功しているケースが多いとのこと。

しかし、犯罪行為を行わず、反社会性が低いとはいってもほぼ間違いなく、何らかのハラスメント行為には及んでいるとのこと。

なので、マイルド・サイコパスの上司がいる場合、「部下の離職率、精神疾患の発症、モチベーションの低下」などが際立つそうだ。

なるほど、知人が職場の上司の理不尽ないじめでうつを発症し、休職を余儀なくされたが、その人が受けた仕打ちは明らかにいじめを楽しんでいるとしか思えないものであり、その上司がマイルド・サイコパスだったのかもしれない。



サイコパスに関して記載しているサイトは多く、中にはチェックリストなども載せているところもあるが、素人がそれを使って安易に判定してはならないという。

チェックの中身は性格、生活様式、性関係、犯罪歴など２０ぐらいの項目について０、１、２、と点数付けをして合計点で判定するものである。

しかし、犯罪歴の有無が判定条件に含まれることについて、確かに反社会性であることは必須条件ではあるが、犯罪的であることは必ずしも必須ではない、という意見もあり、内容の妥当性も議論になっているようである。

また、騙すことに長けているサイコパスの判定は専門家でも難しいという。

なので、素人が安易な判定をして、そのことが広まるようなことがあれば、その人の人生を壊すことになりかねないことを重々に認識すべきであろう。

ちなみに、騙すことに長けていると言えば、心理分析するために接触した専門家が取り込まれ恋愛関係になったという事例もあるそうだ。

素人が決して対峙してはいけない相手だということである。



異常性ばかりが注目されるサイコパスであるが、時と場合によってはその気質が正の影響力を発揮することもある。

嘘をついていることを指摘されても平然としている彼らは、リスクというものを恐れない側面がある。

なので、未知の食材を口にする、危険が予想される場所を踏査するなど、何か新しいことを始めなければならない時や、流動性が激しく、即断が求められる職場などでは、その能力が成功を収めることもあるという。

だから上述の職業で成功する人が多いのかもしれない。



もともと、誰の心の中にもサイコパス的な側面はあると言われている。

そこからある一線を越えた時、犯罪者となるか、ならないまでも社会的に問題のある人物になってしまうのかもしれない。

だが、その一線は非常に大きな一線である。

正式な判定はせずとも、自衛のためにサイコパスの特徴は知っておくべきかもしれない。

下記のサイトに記載されているサインは必ずしもサイコパスであると断定するものではないが、その傾向があるかも、と用心すべきサインである。

あなたの彼氏・彼女は大丈夫だろうか？
http://karapaia.com/archives/52243837.html