おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

ゴーシェ病

2018/08/08

日本の人口はおよそ1億2700万人で、その中のたった150人ほどが罹っているのが本疾患である。
これまでも罹患数の少ない疾患をご紹介してきたが、これもなかなか少ない。
そして、同じ病名が付きながら、タイプによって異なる症状があらわれる。
それは本来なら体内に残ってはいけない物質が、分解されずにそのまま体内に蓄積されていくことで本疾患が発症するのだが、
体のどこに蓄積していくかで現れる症状が全く異なるからである。
以前紹介したファブリー病やポンペ病と同様の代謝性疾患である。
私たちの体は常に体にとって余分な様々なものを分解している。
そして分解には物質それぞれに専用の酵素が必要である。
その体内で働く酵素の数はなんと約5000種類にもなるという。
まだ未発見のものもあるのではないかとも言われている。
それらのたった一つの酵素が上手く働かなくとも病気になってしまう。
何事もなく生きていけるということは、本当は奇跡的なことだと思えてならない。
ファブリー病は「GL-3」という糖脂質を分解する酵素がうまく働かないために発症する。
ポンペ病はグリコーゲンを分解するいくつかの酵素のうちの一つがうまく働かないために発症する。
今回のゴーシェ病は「グルコセレブロシド」という糖脂質を分解する酵素である「グルコセレブロシターゼ」がうまく働かないために発症するのだそうだ。
「グルコセレブロシド」が分解されずに肝臓や脾臓、骨髄、脳の細胞に蓄積するのである。
そして、どの臓器に蓄積するかで多様な症状を呈する。
肝臓や脾臓に蓄積した場合
肝臓・脾臓の腫れ、脾臓の機能亢進による貧血、血小板減少(出血しやすい、血が止まりにくい)
骨髄に蓄積した場合
骨皮質が減少し骨変形、骨粗しょう症、骨壊死などが生じ、骨折しやすくなる、骨痛
脳に蓄積した場合
神経症状(痙攣、発達遅延、斜視、嚥下障害、呼吸障害など)
もちろん、上記の症状がすべて現れるわけではなく、発症のタイプによってⅠ型~Ⅲ型に分類される。
Ⅰ型
これは非神経型であり、脳には蓄積しないタイプである。
なので、肝臓・脾臓の腫れや貧血、血小板減少、骨症状が主な症状となる。
発症年齢は0歳~80歳と幅広く、進行の程度や重症度も様々である。
Ⅱ型
これは急性神経型であり、発症年齢が生後3~5か月と非常に速くに神経症状が現れ、その進行も早いタイプである。
症状は発達遅延、斜視、口をあけにくい、痙攣など。
Ⅲ型
これは亜急性神経型であり、神経症状を伴うものの、ゆっくりと進行するのが特徴である。
神経症状に加え、肝・脾腫も伴うので、最初はⅠ型と診断されていたのが、途中からⅢ型に変更されるケースもあるという。
これにはさらにa、b、cの亜型に分類される。
 Ⅲa型:肝脾腫に加えて、若年発祥の神経症状
 Ⅲb型:神経症状が唯一水平注視麻痺だけで、加えて重篤な臓器 症状を呈するため、Ⅰ型との鑑別が難しい。
 Ⅲc型:水頭症、角膜混濁、心弁膜石灰化などきわめてまれな症状を合併する。
ゴーシェ病は遺伝子異常によって発現される。
人の遺伝子は23対の遺伝子があるが、その一番目の対の遺伝子で、二本の遺伝子ともその異常を伴った場合に発症するのだそうだ。
つまり、片方の親が発症していたとしても、もう片方の親の一番目の遺伝子の二本とも正常であれば、子供たちは全員発症することはない。
片親が発症者で、もう片親の一番目の遺伝子の二本のうち、一本に遺伝子異常がもしあった場合(保因者)、1/2の確率で子供は発症する。
また二親とも保因者の場合、遺伝子の組み合わせは4通りあるので、1/4の確率で一番目の遺伝子の二本とも遺伝子異常を持った子が生まれ、その子が発症してしまうということである。
日本人の場合はⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型がそれぞれ37.4%、27.9%、34.7%とばらけているのに対し、 欧米人においてはⅠ型が94%を占めるのだそうだ。
また、アシュナージ系のユダヤ人は900~1000人に1人の割合で発症しているそうで、これらの違いはまさに遺伝子の違いからくるとのこと。
疾患の原因が酵素がうまく働かないことからくるので、治療は酵素の補充で行われる。
それによって貧血や血小板減少などの血液学的異常や臓器症状は改善されるが、神経症状の改善は乏しいという。
そのほかにも骨髄の移植など様々な治療が行われている。
Ⅰ型については欧米から多くの研究結果が報告されており、また、Ⅰ型が非神経型でもあることから、予後も良いようである。
一般的に年齢が上がるほどに体内の酵素もなくなっていくという。
なので、老化に伴って体のあちこちに不調が現れるのは、酵素の面から見ても当たり前なことといえる。
ただ、歳を重ねるごとに、健康度合いは個人差が大きくなる。
100歳でもまだまだ健康体な方もいれば、60代でも結構老けた感じの方もおられる。
その差にはもともとの体質・生命力や病気の有無、食事内容、仕事内容、肉体的・精神的ストレスのかかり具合、性格、生きがいの有無、等々多くの要因が関わり、その方の人生の結果が現れたものである。
しかし、もう一つ要因を挙げるとすれば、意識的なメンテナンスを行ってきたかどうかという点も大きいだろう。
自分の身体とはいえ、それを労わることができるかどうかは自分自身の心がけ次第である。

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