アベイロフォビア
2022/10/27
何かに対して恐怖症を抱く人は多い。
例えば自分は高所恐怖症である。
だからジェットコースターに過去1~2回は乗ったことはあるが、それは単に見栄を張っただけで乗りたくもなかったし、全く楽しくもなかった。
バンジージャンプなど考案した人の気が知れない。
もともとバンジージャンプはどこかの民族の成人の儀式だったはずだが、その民族に生まれていたら成人として認められることのない人生を送っていただろう。
けれど高所に対する恐怖は多くの人が持っているので理解され易いだろうが、世には恐怖を感じない人からすると、なんでそんなものに恐怖を抱く?というような恐怖症がある。
エレベーターの中ですら恐怖を覚える閉所恐怖症、逆に広い空間が怖い広場恐怖症、先の尖ったもので指されることに恐怖を覚える先端恐怖症など、このあたりはそれでもまだ有名だが、Wikipediaの恐怖症一覧を見ると、実に多彩で変わったものに対する恐怖症がある。
「美人恐怖症」「花恐怖症」「月恐怖症」などはそれぞれのどんなところに恐怖を感じるものか、ぜひ話を聞いてみたいものだと思う。
そんな中、今回取り上げるアペイロフォビアは、「無限恐怖症」あるいは「永遠恐怖症」などと呼ばれる恐怖症である。
つまり限りのないものに対する恐怖症というものらしい。
検索をかけてみても医学的な説明をしているところは見つけられず、あるサイトで紹介されているだけなので、実在するものかどうかは定かではない。
ただ、「自分がそうだ」というサイトは幾つかあり、自分が感じている恐怖がどのようなものかを語っている人は確実にいるので、ちょっと覗いてみてほしい。
https://ameblo.jp/santa3diet/entry-12341669766.html
ある人の場合は、ふと何かのきっかけで「宇宙の成り立ちやその果て」や「時間の終わることのない永遠の流れ」などというものに思い至った時、あまりの底知れなさに恐怖が襲いかかってくるという。
もしかしたらそのような恐怖症にかかる人は、ほかの人よりも想像力が豊かで、鋭敏な感覚の持ち主なのかもしれない。
宇宙が始まる前には何があったのか。
宇宙は今でも膨張し続けているというが、その外側には何があるのか。
これから何百億年が経過しようとも、この宇宙はこのままなのか。
誰もが一度は考えるこの疑問。
しかし、通常はあまりのスケールの大きさに想像すらできず、普通の生活に戻っていく。
彼らの恐怖はどこから来るのだろう。
空間的・時間的広がりをリアルに感じようとして、そのあまりの広大さに、そして自分の存在のあまりの小ささに思い至り、恐怖を感じてしまうのだろうか。
また、ある人の場合は死後も永遠に「死」という世界で生き続けなければならないことを恐れているという。
この世であろうが、あの世であろうが、自分の存在が永遠に終わらないと考えることが恐ろしいというのである。
来世がどのように素晴らしいものであろうと、そこから逃げる手段がないことは、この恐怖の人たちをぞっとさせ、考えただけで不安やパニック発作から鬱まで、様々な症状を引き起こす可能性があるという。
上記のサイトの人も、考え始めると怖くてじっとしていられなくなり、ひどい時には入浴中にそのような思考になってしまい、錯乱して取り乱し、タオル一枚で飛び出してきたこともあったという。
また、家の中で発狂しそうになって急いで外に走り出て深呼吸して心を落ち着かせようとしたこともあるそうだ。
やはりここまで来ると恐怖症という立派な病気だといえるが、医学的な見解をネット上に出す人もいないほど研究されていない病なのだろう。
今のところ、対処法として推奨されているのは「考えないようにすること」しかないようである。
しかし、それは至極当然なことかもしれない。
いくら宇宙の広がりが永遠で、果てしなく、時間もとどまることなく永遠に流れ続けても、輪廻転生で自分という存在が終わることなく生き続けなければならないとしても、人は明日も学校や仕事があり、テストや会議、営業や製作しなければならないのだから。
もっとも、そのように簡単には割り切れないからこそ恐怖症になるのだ。
どうか、何とかうまい落としどころやごまかし方など、自分なりの対処法を見つけて、なるべく穏やかに過ごしていけるようになって欲しい。
ちなみに、唐突なようだが、最近では腸内細菌が恐怖にも関連性していると言われている。
「腸は第二の脳」と呼ばれるほどに、全身の生命活動に深い関わりがあることはこれまでも伝えてきた。
腸内細菌を整えると神経疾患や時には精神疾患まで改善することもあるというが、恐怖にも関わっているのかと改めて腸の整いの大切さを思い知らされる。
動物実験で、ある音と電気ショックを与えられたマウスは、次第にその音を聞いただけで恐怖を覚えるようになる。
しかし、音を聞いても電気ショックが与えられない状態が続くと、いつしか音を聞いただけでは恐怖を感じることはなくなるという。
ところが、抗生物質で腸内細菌を取り除いたマウスや、最初から無菌室で育てたもともと腸内細菌を持たないマウスなどは、音を鳴らしただけで電気ショックを与えなくなった状態が続いても、いつまでも恐怖を感じ続けるそうだ。
それは恐怖の記憶を保存しておく脳の領域の興奮させる神経線維の密度が高くなり、一方で恐怖の消去学習を促す領域の神経線維の密度が低くなるからとのこと。
腸内細菌から分泌される代謝産物の有無によってこのような脳の神経繊維の生成に差が生じるというのである。
当然のことながら、アペイロフォビアの人々の腸内細菌がそのようになっているかどうかはわからない。
ただ、一般的に腸内細菌と恐怖にはそのような関係性があるということである。
もしあなたが、身の回りの出来事に敏感に反応しやすく、便秘や下痢になりやすいとか、体調を崩しやすいようであるならば、果たして自分の腸内細菌は良い状態を保っているかどうか今一度振り返ってみて欲しい。
「健全なる精神は健全なる身体に宿る」とよく言われる。
実はこれは出典の意味と現在の意味とは異なり、全くの誤用らしい。
元々は1~2世紀の詩人、ユウェナリスの詩の「神に祈った願いが叶っても、必ずしも幸せになるとは限らず、身を滅ぼす人も多い。大欲を抱かず、心身の健康を願いましょう」という趣旨の一節を、近代の列強国が富国強兵の一環として「身体を鍛えれば精神も鍛えられる」という肉体信奉の言葉として歪めて使われだしたものらしい。
それが戦後になっても訂正されることなく使われ、現在に至ったということのようである。
しかし、これ、東洋医学的には当たらずとも遠からずと言える。
身体の働きがうまくいっていなければ精神的にも低迷しやすいし、笑うと免疫力がアップするなどということは、まさに心と体は一体であることの証明である。
まあ、健康体であっても人に優しくない人間もいるので、腸内細菌にはぜひとももっと頑張ってもらって、人の性格も直して欲しいと思う。
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