おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

「幸せホルモン~オキシトシン」

2023/03/14

TVなどでも時々聞くオキシトシン。

ご存知の方も多いかと思う。

脳の視床下部というところから分泌されるホルモンで、別称「幸せホルモン」などとも呼ばれている。

なぜ幸せホルモンと呼ばれているのか。

どうすればそのホルモンを出すことができるのか。

そのホルモンを出すことで生活はどう変わるのかを見ていきたい。



オキシトシンの作用は様々。

一部筋肉の収縮を助け、中枢神経内では神経伝達物質としての働きも担っている。

また、出産時に子宮を収縮させ分娩を促したり、乳腺の筋繊維を収縮させ母乳を分泌させたりする。

そのため、医療の分野では子宮収縮薬や陣痛促進剤として使用されるなどし、長い間女性特有のホルモンだと認識されていた。

そもそも「オキシトシン」という名前自体がギリシャ語で「早く生まれる」という意味らしく、このことからも女性に大きく関わりのあるホルモンであることが分かる。

しかし、近年、このオキシトシンは男性にも普遍的に存在することが明らかとなり、その作用に注目が寄せられている。



母体を助け、母乳の分泌を促すオキシトシンには、動物が子どもを守るために必要な感情、すなわち「愛情」を脳に感じさせる効果がある。

それゆえ、「幸せホルモン」の他にも「恋愛ホルモン」「抱擁ホルモン」「信頼ホルモン」「絆ホルモン」「思いやりホルモン」「癒しホルモン」など、多くの異名が与えられている。

もう、名前を聞くだけで幸福感漂うことこの上ない(笑)。

具体的な効果を列挙してみよう。



〇幸せな気分になれる

〇脳・心が癒されストレスが緩和する(→安定した眠りが得られやすくなる)

〇不安や恐怖が減少する(→自律神経のバランスの改善)

〇他者への信頼の気持ちが増す

〇社交的となり、人と関わりたいという好奇心が強まる

〇親密な人間関係を結ぼうという気持ちが高まる

〇学習意欲と記憶力が向上する

〇心臓の機能を上げる(高血圧予防)

〇感染予防につながる

〇病気やケガの治りが早くなる

〇鎮痛効果

〇アルコール・ニコチンなどの依存症状の緩和(禁酒・禁煙の強い味方)

などが挙げられている。

こんなに良いものならば分泌させない手はない。



ということで、オキシトシンを出していく方法を見ていこう。

1.配偶者や恋人がいる場合

〇触れ合う/スキンシップ

〇マッサージ

〇見つめ合う

〇抱擁/ハグ

〇キス

〇性交渉

まあ、要はイチャイチャし合えばそれでいいというわけだ。

特に女性の場合は性交渉によって大量のオキシトシンが出るとされており、愛情が深まるばかりではなく、心身ともに良い影響が与えられる。

当然、仕事や勉強にも意欲的に取り組むことができるようになる。

これは年齢に関係なく、というか高齢になればなるほど、どこまでイチャイチャし合うかはともかく、スキンシップを行うことで血圧上昇を抑えるとか、心機能への負担を減らすことができるので行うべきである。

出かけるときには手をつなぎ、テレビを見ながら手をつなぎ、寝る時にも手をつないで寝るといいのではないだろうか。

先日、TVの医学番組でも実証されていたので、「健康で過ごすため」に始められてはいかがだろう。



2.配偶者や恋人がいない場合

〇スキンシップ(同性でもOK)

〇家族団らん

〇友達と食事する

〇友達とカラオケに行く

〇おしゃべり

〇プレゼントを贈る・人に料理を作る

〇ストレスを感じた時、信頼できる人の声を聞く

正直、配偶者や恋人が居る場合よりは効果は落ちるそうだが、要は仲間と一緒に遊んで、楽しい時間を過ごせば十分に分泌されるという。

誰かの為にプレゼントしたり、料理をしたりすることも良いそうだ。

オキシトシンは社交性を高めてくれるそうだが、逆に社交的な行動を取ることでオキシトシンを増やすことが可能だということ。

社交的になることでパートナーも見つかりやすくなるとも言える。



3.家族も友達もいない場合

〇感動する(アニメ・小説・映画、大自然とのふれあい、憧れの人との出会い、などなど)

〇新しいことへのチャレンジ(知らない場所への旅行、初めてのスポーツ、着たことのない色の服を着る)

〇感情を素直に表す(口に出していう、SNSに投稿する)

〇親切を心がける

〇思いやりの心を呼び覚ます

〇哺乳類とのスキンシップ(特に犬・猫)

〇Hugvie(ハグビー)を使う(http://hugvie.jp/)
  (抱き枕に電話機能を埋め込んだもの。声だけでは相手の存在が感じられないが、抱き枕が加わることで相手の存在が感じられるようになるという。効果は実証され、商品化されている)
 
人には様々な理由で人との交流が狭まってしまうこともある。

しかし、そんな環境にあってもオキシトシは出すことが出来る。

心がパッと弾けるような体験を繰り返すことで分泌できるのだ。

映画でもアニメでも「素敵!」「可愛い!」「感動した!」こんな感情を解放して、大げさに味わうことでより分泌量は増える。

そして繰り返し行う中で感受性自体がどんどん高まり、ありふれた日常生活の中に感動ポイントを見つけやすくなる。

他人へのちょっとした思いやりや褒める行為、あるいはしてもらったことへの「ありがとう」の言葉。

そうした人との交流で温かい気持ちになった時、オキシトシンは分泌されているのだ。



オキシトシンがすごいのはその性質にもあるという。

それは「増やした分だけまた増える」というポジティブなスパイラルという性質である。

分泌されたオキシトシンがある一定量を超えると近隣の細胞を刺激し、そこからまたオキシトシンが分泌されるのだそうだ。

そんな好循環を生むオキシトシンだから、必ずしも配偶者や恋人がいなくとも、上記のような生活が送れていれば、やがてポジティブなスパイラルが生まれることになる。

ハッピーそうにしている人がいつまでもハッピーな笑顔なのは、こうした効果によるものかも知れないと言われている。



スウェーデンではオキシトシンについての知識が広まっており、カップルや親子でのボディタッチが大切にされているそうだ。

小学校や保育園では「タッチケア」と呼ばれる肌に触れるケアが指導されていて、子供たちがお互いに背中などをなでているのだとか。

それによって子供たちの問題行動が減っているというから日本でも大いに取り入れるべき取り組みだろう。

そのような提案があれば、「わいせつ行為の助長につながりかねない」などと言い出す人が出てくるだろうか。

しかし、そういう人にこそ「タッチケア」を受けてもらいたいものだと思う。



スウェーデンにおける「タッチケア」は教育の分野にとどまらず、医療の分野でも応用されているという。

カロリンスカ大学病院では様々な病気の患者に対して「タッチケア」は行われ、特に慢性に痛みを持つ患者には効くとのこと。

日本でも昔から「手当て」と呼ばれ、患部に手を触れることが治療の原点でもあったのだ。

こうして巡り巡って原点に戻ることも多い。

手前味噌ではあるが、鍼灸の世界も見直して欲しいものである。



日本でも、ある元看護師がリウマチで8年も痛みで苦しんでいたそうだが、知り合いの看護師に頼んで10分間背中をさすってもらったという。

すると、痛み止めもあまり効かなかったリウマチの痛みが驚くほど軽減され、施術中は寝てしまいそうになるほど心地よさを感じたという。

もちろん、これだけで病気が治るわけではないが、「タッチケア」の効果は睡眠薬、降圧薬、鎮痛薬、抗不安薬、惚れ薬等と同等の効果が期待できるとTV「ガッテン」でも紹介されていたとのこと。

病棟や介護施設などでたまに見られる背中さすりは本来もっともっと取り入れられるべき「ケア」だったのだ。

今の日本ではそうした「タッチケア」を許すだけの人員配置を法律は認めていない。

違法ではないが、施設運営ができるほどの診療報酬を許してはいないのだ。



食べ物とオキシトシンとの関係では、残念ながらオキシトシンを増やす食べ物というのはない。

しかし、仲間との楽しい食事、美味しいものを食べたという幸せな思い、その気持ちを素直に「楽しいね」「美味しい」と表出すると分泌が促されるそうだ。

また、オキシトシンの原料になる成分はタンパク質に含まれており、動物性、植物性どちらのタンパク質も必要とされているので、バランスのとれた食事を心がけることが大切である。



ちなみに、同じ「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンというものがある。

オキシトシンが「愛情」を豊かにしてくれるホルモンならば、セロトニンは「心の安定感」をもたらしてくれるホルモンである。

結果的にどちらも幸せをもたらすホルモンである。

セロトニンの具体的な効果は

1.心の平静をもたらし、感情の浮き沈みを防ぐ

2.睡眠をサポートする

3.身体をすこやかに整える(腸の働きが整えられる)

などの作用がある。


逆に不足すると、

1.不眠(眠りが浅い、スッキリ起きられない)

2.心が落ち着かない(気分が沈む、怒りっぽくなる)

3.自律神経の乱れ(首・肩こり、イライラ、めまいなど)

などの症状があらわれ、うつ病の原因になるとも言われている。



そのセロトニンは食事で増やすことができる。

セロトニンを作り出すのに必要な栄養素は主に「トリプトファン」と「ビタミンB6」。

この二つを主に意識しながら、バランスのとれた食事をすることが幸せホルモン分泌に欠かせないというわけだ。

トリプトファンは通常の日本食によく含まれているそうだが、特に多いのは豆類や赤身の魚、チーズ、バナナ、ケールなどだそうである。

ビタミンB6はレバーや鶏胸肉、じゃがいもなどに多く含まれるとのこと。

まとめれば「上記の品をちょっと意識しつつ、バランスのとれた日本食を」ということである。



いかがだろうか。

こんなホルモン出まくりな人ばかりになったなら、世の中ももっと平和になるにちがいない。

あなたは配偶者や恋人、家族や友人、ペットたちとハグや楽しい時間を過ごせているだろうか?

漫画や小説、映画で思い切り感動しているだろうか?

良い食事が摂れているだろうか?

そして、人との関わり、交流の中で温かい気持ちで過ごせているだろうか?

ぜひ、ちょっと意識してみていただきたい。

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