「コンビニパンは危険」は間違い?
2017/05/24
あなたはコンビニやスーパーで売られているパンを食べるだろうか?
自分はけっこうよく食べる。
実はそれらのパンが危ないとか、危なくないとかいう議論がネット上に出ている。
はてさて、どんなものやら…。
まずは「コンビニパンは危ない」派から。
これは2015年4月に配信された記事である。
http://biz-journal.jp/2015/04/post_9478.html
http://biz-journal.jp/2015/04/post_9478.html
通称“混ぜ屋”と呼ばれる食品添加物メーカーの社長に「今一番気になる添加物はなんですか」と聞いたところ、「pH調整剤です」と即答が返ってきた。
pH調整剤とは“日持ち調整剤”とも呼ばれ、食品の腐敗を防ぐ役目があるそうなのだが、その量がかなり多いというのである。
その心配の理由が健康保持に不可欠な腸内細菌まで殺しかねないからというもの。
この社長、製パン業者に「もう少し量を控えては」と進言したそうだが、コンビニチェーンからの要求で受け入れられなかったそうだ。
このpH調整剤はクエン酸、フマル酸、重合リン酸塩など複数の成分が配合されているが一括して「pH調整剤」と表記される。
そして、対象食品にも、使用量にも、制限が無いためコンビニや食品メーカーにとって都合にいい添加物なのだそうだ。
pH調整剤が多く使われることになったのは、これまで使われていた「保存料」が具体的な使用成分を表示しなければならなくなったことや、発がん性の不安を感じている消費者が増えてきたことにあるという。
pH調整剤で特に問題なのは「リン酸塩」だとか。
これはカルシウムやミネラルの吸収を阻害するため、食べ物からカルシウムを取り込めない分、骨からカルシウムが溶け出してしまうという。
その溶け出したカルシウムが神経細胞内に溜まると、イライラや神経過敏を引き起こすと言うのだから怖い。
また、ミネラルの吸収阻害で亜鉛が少なくなるのもキレる要因と言われている。
最近、突然キレる人が非常に目立ってきているのも、リン酸塩の過剰摂取に一因があると指摘する人もいる。
このリン酸塩はpH調整剤だけでなく、調味料としても使用されるらしく、「調味料(アミノ酸等)」と書かれている中の「等」に含まれていることが多くなっているのだとか。
なかなか怖い指摘である。
次に「『コンビニパンは危ない』は間違い」派。
これは上の記事の約2週間後に出たものである。
http://biz-journal.jp/2015/04/post_9615.html
http://biz-journal.jp/2015/04/post_9615.html
そもそも添加物は十分な施設の整った研究機関で、正しい手順で実験を行った結果、安全な範囲内で使用できる量を使用している。
生命に欠かせない水も塩も取りすぎれば死に至るが、これを猛毒だと騒ぐ人はいないわけで、摂取できる限度というものを理解すれば問題なく、「ほんの少しでも含まれていると、大量投与した場合と同じ害がある」というのはインチキである。
これがフードホラーを煽る人の商売の種なのだ。
添加物が本来人に不要なものであるという考え方は正常だが、それぞれメリットがあって使われているのであって、食べた人を病気にするために添加されているわけではない。
もちろん手を抜いて簡単に味を調え、栄養価も低い商品を売りつけて利益を上げることもできるが、そのような企業姿勢と毒性があるかどうかは別問題である。
名前の印象から危険な気がするというのは単なる感情論で、文明人としてはいかがなものかと述べたい。
そもそも「100%安全」と言い切れる食べ物など存在しない。
「添加物が怖いからコンビニパンを食べない」というのは、「交通事故が怖いから外出しない」と言っているようなものである。
では、「自作農園で作った野菜なら絶対安心」といえるのだろうか。
通りすがりの誰かがタバコをポイ捨てしただけで、出荷できないレベルの毒性を含む野菜となる可能性もある。
使用した肥料が粗悪な製品で危険な毒を含んでいるかもしれない。
野菜を育てる前に使用した除草剤が発癌物質を含んでいるかもしれない。
危険性に関していえばキリがないのである。
食品添加物を日本人は平均して年間で赤ちゃんの頭ほどの大きさの量を摂取していると言われるが、それでも毎年平均寿命が延びている。
つまり、食べたらすぐに危険が生じるということはないと考えられるのではないだろうか。
添加物の使用量が増えるにつれ、死亡者が激増しているというデータがあるわけでもなく、添加物を怖がることは理論的とは言えない。
とまあ、以上のような論理展開となっている。
コンビニパンを引き合いに出していることから、先の記事に対抗して出された記事だと思われる。
もちろん全文を転記したわけではないので、「詳しくはWebへ!」なのだが(笑)、あなたの印象はいかがだっただろうか?
後者の記事を支持するという方には申し訳ないが、自分の感想としては後の記事は「まるでネトウヨのような論理展開だ」と感じた。
反対意見を述べるのはいいのだが、話がかみ合っていないばかりか、相手の主張内容を捻じ曲げ、極論を持ち出し力技で押し伏せようとする論理展開が、まさにネトウヨのようなのである。
まず、先の記事では食品添加物の中のpH調整剤に焦点を当て、それに使用基準がなく、大量に使用されていることを危惧している。
それに対し、後の記事では食品添加物全般のこととして書かれている。
pH調整剤が自分も気になって調べて見たら、確かにpH調整剤の中の一部の品目には必要に応じて使用基準が設定されているけれども、
「pH調整剤の多くには使用基準を定めていない」
と食品安全委員会のQ&Aが出ていた。
このことによって使用量に制限がなく、コンビニチェ-ンの要求によって大量に使用されていることが問題だと言っているわけだ。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/show/mob07005000006
http://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/show/mob07005000006
pH調整剤と水や塩を同列に並べ、取りすぎるとなんでも害になるのは当たり前だというが、だからこそ使用基準が必要なのだ。
もし、後者が反論したいのであれば、「pH調整剤は使用基準を設けずに大量に使っても安全だと証明されている」という記事を載せなければならない。
それが噛み合った議論というものだ。
筆者の「企業はそんな危険なことはしないはず」との基本姿勢は、
良く言えば「人を疑うことを知らない人」
悪く言えば「企業寄りの立場の人」
といったところだろう。
後の記事の筆者のように国の定めたものは絶対だと信じ切れる人は幸せだが、現実には多くの抜け穴があることがこれに限らずある。
もし安全なことしかしていないのなら、これまで公害や薬害など起こることもなかっただろう。
公害や薬害の存在は、そのときどきの基準は必ずしも絶対なものではなく、往々にして穴があったという証拠である。
「食べても寿命が延びている」とも書いているが、今100歳を超えておられる方々は明治の終わりから大正初期の生まれの方々であり、
身体の基礎がつくられた時期と食生活において、若い世代との間に圧倒的な違いがある。
現在高齢の方々が日常的にコンビニパンを食べておられるのかどうかも、いささか疑問である。
食品添加物と寿命との関係に関しては、今まさに壮大な実験を行っているようなもので、それこそコンビニが出始めた現在40~50歳代から下の年代の人たちの今後の経過を見るべきだろう。
後の記事では、まるで先の記事において
「ほんの少しでも含まれていると、大量投与した場合と同じ害がある」
と書かれていたかのように、わざわざ鉤かっこまでつけて書いているが、そんな言葉はどこにも使われていない。
おそらく先の記事を見た後の筆者が感じた印象をそのまま書いたのではないだろうか。
最近国会でもよく聞く言葉だが、それこそ「印象操作」をする記事である。
これでは議論にすらならない。
相手の主張をねじ曲げ、極論を引き合いに出し、まるで安倍さんの国会答弁のような記事である。
自分が鍼灸学校に在学していた頃、同級生がコンビニでアルバイトしており、1週間コンビニ弁当だけを食べ続けていたことがあった。
すると、ある時、その同級生は身体が痺れてきたというショッキングなエピソードが起こった。
「研究されているから大丈夫だ」
といくら声高に言われても、不安を持たざるを得ない現実が本当にあるのだ。
後者の記事が噛み合った内容で、pH調整剤にもしっかり基準が設定されており、安全性も確認されているとの研究結果を載せてくれたら、自分も大好きなコンビニパンをもっと安心して食べられるのだが・・・。
ちなみに、なるべく安全性が確認されているものを選ぼうと、pH調整剤を使用しているものはなるべく避けるようになったことは言うまでもない。
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