おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

マスト細胞活性化症候群

2019/01/14

私たちの身体には抗原となる異物が入ってくると、その異物を排除して体を防衛する免疫反応が備わっている。
しかし、その異物の侵入が繰り返されると、抗体が体内に増えすぎ、一定量を超えると過剰に免疫反応を起こすことがある。
それがいわゆるアレルギー反応である。
そのアレルギー反応を起こす細胞の一つがマスト細胞である。
マスト細胞は血管が通っている組織であればほぼすべての組織で見出すことができるので、逆にどこのマスト細胞が働くかで現れる症状が多様となる。
特徴的なのは皮膚上にみられる蕁麻疹、呼吸器系統でみられる喘息発作やくしゃみ、鼻水であろうか。
そのマスト細胞がさらに過剰に働きすぎるとか、正常な働き方をしなくなるのがマスト細胞活性化症候群(以下MCAS)である。
実は、この疾患の存在に気が付いたのは「人間アレルギー」を調べているときだった。
当初は精神医学的な意味での人間アレルギーを調べていたのだが、実際に免疫反応として人との接触が困難になるケースがあることを知った。
彼女は米ミネソタ州に住むジョアンナ、29歳である。
彼女はもともと少しアレルギー体質だったが、至って健康で教師として働く普通の女性だった。
同僚のスコット・ワトキンスと恋に落ち、2013年めでたくゴールインした。
しかし、結婚後ジョアンナのアレルギー症状は徐々に悪化していき、多くの食べ物に反応するようになっていった。
スコットは彼女が食べられる料理を作るなど懸命に支えていたが、ジョアンナの症状はひどくなる一方で、ついには人にまで反応し始め、なんと両親にまで反応し始めるようになってしまったのである。
そして、2016年のある日、最も恐れていた事態になってしまった。
最愛の夫スコットにまで反応するようになってしまい、顔を近づけるだけで咳き込むようになり、最終的には同じ部屋にいるだけで息苦しくなるようになってしまったのである。
(2016年の時点では唯一アレルギー反応を起こさない実の兄と妹だけが部屋の入室が許されている)
彼女のような重症なMCASについてもう少し詳しく見てみよう。
MCASのほとんどの患者は女性なのだそうだ。
後天性の病で、特定の人にどうして発症するのかは解明されていないという。
欧米では1~15%の罹患率で、ありふれた病気であるとの記述も見られるが、その割に日本語で取り上げられているサイトは案外少ない。
日本ではまだ一般的ではないようだ。
アレルギー反応でよくみられる症状は蕁麻疹、喘息、鼻水であると上記したが、MCASの多くは蕁麻疹の症状がみられず、以下のような症状を呈するという。
普通のアレルギー疾患と症状を異にするのが、マスト細胞が正常の働き方をしないということなのだろうか。
〇胃腸系症状(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、腹張り、栄養吸収障害)
〇低血圧
〇疲労
〇喘鳴
〇失神、めまい
〇骨痛
〇認知障害
〇不安
〇急激な体重増加、あるいは体重減少
〇アナフィラキシー
〇胸部痛、または心拍増加
〇太陽光への過敏
そして、そのアレルギー症状を引き起こす因子も、食べ物・飲み物はもとより、鎮痛剤、虫刺され、極度の高・低温、運動、香水・化学物質などの強いにおい、皮膚に対する摩擦・圧力・振動、感情的・身体的ストレスなど多岐にわたる。
ジョアンナの場合は何が引き金となってスコットにも反応するようになったのだろう。
臭いだろうか。
化学物質過敏症という病気があるが、あれは臭いとして感知しなくとも、物質そのものに反応するので、ジョアンナの場合も、通常では分からないほどの体臭であっても、身体から発せられる臭い物質に反応しているのかもしれない。
MCASは研究が始まってまだ10年ほどしかたっていないらしく、線維筋痛症、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群など他の疾患と診断されることもあるという。
彼女ほどの重症なケースでは流通している薬剤では治療ができず、また、もし妊娠したとしても流産する可能性が高いとも言われている。
二人の生活は苦難の連続である。
スコットとは数分と同じ部屋に居られないため、別の部屋でビデオ通話をしながら同じテレビを見たりする。
化学物質やホコリ、ちょっとした微粒子にも反応してしまうため、居室はビニールやシートで覆われ、風邪や空気の流れが起きないようにされている。
空気清浄機だけが頼りとなり、太陽光にも気を付けているとのこと。
二人の生活は過酷で、抱きしめ合うこともできないが、決してあきらめることなく、必ず治ることを信じて前向きに暮らしている。
余談だが、ジョアンナが人に対してアレルギー反応を示すように、人間アレルギーをもつ猫や犬もいるようだ。
何でも、人間のフケに反応するのだとか。
ラブラドールのアダムは自己免疫不全という病気で人間のフケにも反応するようになったという。
よく、ペットとの過剰な接触をいさめる意見などがあるが、ペット側からすると、「こっちだって注意が必要なんだ!」と怒られるかもしれない。
しかし、本来は我が身を守るはずのシステムが自分を苦しめてしまうとは、アレルギー疾患とは本当になんとも厄介な病気であることか・・・。

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