おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

ジストニア

2022/09/28

もし自分の体が自分の意志とは関係なく動いてしまうとしたら、それは非常にストレスなことで、緊張がさらに緊張を呼んでしまうかもしれない。

本稿29号では「エイリアンハンドシンドローム」という患手が健手と拮抗した動きを呈する疾患を報告した。

これも自分の意志とは異なる動きを呈するという点では同じだが、症状の原因となる脳の領域が異なることから似て非なる疾患であると言える。

エイリアンハンドシンドロームは脳梁という左右の脳をつなぐ部分が断裂されることで、左右の手が別々の動きをするようになるのだが、例えば右手がかけたボタンを左手が外してしまうなど、不随意的な動きではあるけれども「意味のある動き」をすることがしばしば見受けられる。

しかし、ジストニアは「大脳基底核」の異常により、運動そのものの制御がうまくいかなくなることによって起きる。

百聞は一見に如かず、なので以下の動画をご覧いただければと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=CAqEnyILJkc



「大脳基底核」の異常によって生じるとされているので、脳卒中や脳性麻痺など中枢神経疾患で発症することもある。

そのような病気によって引き起こされる場合を「二次性ジストニア」という。

こうした明らかな誘引が特定できないものを「一次性(あるいは原発性)ジストニア」という。

動画で紹介されている方々はいずれも「一次性ジストニア」の方々であろう。



「一次性ジストニア」はさらにいくつかのタイプに分類される。

遺伝子異常による「遺伝性ジストニア」があり、その中にも更に20もの型が知られているという。

また、字を書くときだけ力が入り、字が書けなくなる「書痙(しょけい)」、楽器を演奏するときに指や手首が曲がったり伸びたり、こわばったりする「音楽家ジストニア」など職業に関連した「職業性ジストニア」と呼ばれるものもある。

より身近なケースだと、左右どちらかの胸鎖乳突筋などが緊張しっぱなしで顔が傾いた状態のままで固定してしまう痙性斜頚など、体のどこか一箇所のみに不随意的な過緊張が発生してしまう「局所性ジストニア」というケースもある。

「不随意的な筋緊張」という点では肩こりや腰痛までも広い意味でのジストニアと規定する人もいる。



上記のようにタイプが多岐にわたることから分かるように、症状も多様である。

人によって発症年齢や出現部位も異なる。

首のねじれ、四肢のねじれ、体幹のねじれ、などの不随意運動の他に、顔面にも下記のような動きが出ることもある。

〇まぶたが勝手に閉じようとする

〇口が開いたまま閉じられない

〇口を閉じたまま開けられない

〇唇が突き出る

〇顎が左右に動く

〇舌がクネクネ動く、口の外に出る



また、声帯に異常が出ることもあり、声を出そうとすると声がかすれる、出なくなるなどの症状もある。

書字や楽器など、手先を使う状況に限って症状が出現することもある。



【 特  徴 】

〇常同性
 ジストニアの姿勢異常や運動パターンは患者ごとに常に同じであり、日によって姿勢や部位が異なることはない。

〇動作特異性
 ある動作をしようとするとジストニアの症状が現れること。上述の書痙など。

〇感覚トリック
 特定の感覚刺激によって症状の緩和が見られること。
 
 例えば痙性斜頚で頬に手を当てるだけで頸部の曲がりが一時的に改善される。

 あるいは眼瞼痙攣でサングラスを着用し、光刺激を減らすと症状が緩和されるなど。

〇早朝効果
 起床時に比較的症状が軽い。

〇オーバーフロー現象
 ある動作を行う際、その動きに本来不必要な筋が不随意に収縮する現象。

 動画では単に「歩く」動作時に体幹や首のうねり動作が加わる。

〇フリップフロップ現象
 症状があるきっかけで急に憎悪するとか、軽快する現象。

 俳優がスランプの時の一つの現象として、「セリフもしっかり覚えていて、言うタイミングもわかっているのに言葉が出てこなくなる」ことがあるという。

 これも軽いジストニアかもしれない。

 実際、希ではあるが心因性のジストニアもあることはあり、外傷、手術、心身ストレスなどが発症の契機となることもある。

 俳優の場合、そうしたスランプから何かをきっかけに脱出することもあるようなので、それがいわゆるフリップフロップ現象なのかもしれない。



【 治 療 

現代医学的には薬物療法として抗パーキンソン薬や抗不安薬などが用いられることもあるそうだが、概して有効性は低いという。

ボツリヌス療法として、ボツリヌス菌が産生する毒素を極微量注射し、緊張を緩める方法もある。

高額ではあるが効果は高いという。

2日から1週間で効果が現れ、3~4ヶ月は持続するとのこと。

あるいは神経ブロックによって神経を破壊し、緊張を緩めるという方法もある。

ボツリヌス療法よりは安価だそうだが、有効率が劣るとのこと。

最近では「脳深部刺激療法」という方法も出てきたようである。

これは脳の中の狙うべきポイントに細い電極を留置し、胸の皮下に埋め込んだ装置から電気刺激を流し、神経を麻痺させることで症状を緩和するという療法である。

しかし、高額な費用の問題や「機械によってコントロールされ続けること」の不安やストレスなどの問題もあるようである。



基本的にジストニアには鍼灸が有効であると思われる。

当院においては子供の頃から痙性斜頚を患っており、その胸鎖乳突筋の緊張から波及して、胸郭全体の緊張が高まり、痛みを併発したケースがあった。

このケースでは持続的な治療により、胸鎖乳突筋の緊張の高さはまだ残るものの、胸郭の痛みはなくなり、頸部の回旋もスムーズにできるようになり、運転時の後方確認も支障なく行えるようになった。

日本における一次性ジストニアの患者の多くは局所性ジストニアであると言われている。




なので、眼瞼痙攣、痙性斜頚、書痙、痙攣性発声障害などでお悩みの方は是非鍼灸院の門戸を叩いてみてほしいと思う。

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