おのでら鍼灸経絡治療院

体のこと、あれこれ

「座りっぱなし」のリスク

2017/07/05

「座りっぱなしのリスク」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは「エコノミー症候群」だろうか。
しかし、今日の話題はもっと日常的な「座りっぱなし」のこと。
実はわりと座りっぱなしのリスクの研究は以前から行われていて、現在の知見としては以下の点が確認されている。
なお、ここでの「座りっぱなし」とは単に仕事がデスクワークであるというだけでなく、車の移動、余暇時間のテレビの視聴やパソコン使用などによる座位時間も含めている。
どんな理由であろうと、一日のうちで自分が座っている時間はどのくらいであるかを思い出しながら是非ご一読頂きたい。
〇テレビ視聴による座位時間が1日2時間未満の人を基準とした場合、2~4時間の座位時間の人、4時間以上の座位時間の人はそれぞれ総死亡リスクが11%ずつ上昇。また、冠動脈疾患(心臓疾患の一つ)の死亡リスクが18%上昇するとのこと。
〇別の調査では1日6時間座って過ごす人は、3時間未満の人と比べて死亡リスクが女性で37%、男性で17%高くなるとのこと。
〇デスクワーク中心の人は立ち仕事中心の人と比べて心臓病になる確率が2倍になる。
〇1日のうちの一定時間、運動を取り入れることで死亡リスクは幾分軽減する傾向はあるも、全くは無くならない。
〇長時間の座位とともに、運動も体を動かすこともまったく行わない場合(通勤で歩くことも家事も行わない)は女性で94%、男性で48%に死亡リスクが上昇する。
〇1時間座位を続けるごとに平均余命が22分ずつ短くなるとの研究結果も。
〇「座位による健康被害は喫煙に匹敵する」と主張する研究者も多い。
〇これらの危険リスクは休日に行う中~強度の運動でも軽減できない。
〇身体的影響のみならず、「座りっぱなし」は精神的に「不安」を助長するとされ、高校生を対象とした調査では1日2時間以上テレビやパソコンの前から動かないグループは、2時間未満のグループに比べて不安リスクが36%も上昇する。
以上のことが現在確認されているという。
座りっぱなしが健康に良くないことはよく分かったが、なぜなのだろうか。
人は座った瞬間から脳から脚への電気刺激が低下するという。
なるほど、力が抜けるので当然か。
それによってカロリー燃焼率が毎分1kcalまで下がり、脂肪燃焼率も90%も低下するという。
また、座って2時間も経過すると、善玉コレステロールが20%減少し、24時間経過した後にはインスリンの効果が24%減って糖尿病のリスクも上昇してくるのだそうだ。
ホルモンの分泌の変化など、代謝障害が著しく起きてくるようだ。
「不安」との関わりでは、睡眠パターンの障害や社会からのひきこもり、基礎代謝の低下などが関係するのではないかとも言われているが、まだ研究が始まった段階のようである。
また、どうやら物理的な影響もあるようだ。
椅子に座ることで臀部から太ももの後ろ側に体重の圧迫を受けるわけだが、太ももには太い静脈が走っている。
それらの血管の血流も阻害されて、血栓ができやすくなってしまう。
それこそ「エコノミー症候群」そのもののリスクである。
しかも、どうやらその体重の圧迫だけでなく、股関節を曲げること自体も血流の阻害をもたらすという。
座面に対して135°の角度での座り方が最も負担が掛からない座り方なそうだ。
確かにそんな寝そべったような座り方は腹の感覚としては楽だけれども、仕事の時にはそんな座り方はできるわけがない。
それではもっと「座りっぱなしのリスク」を軽減する方法はないのだろうか。
アメリカ・インディアナ大学の研究で30分、1.5時間、2.5時間の座位ごとに時速3キロの速さ(ややゆっくり目の歩行スピード)で5分間歩いてもらったところ、1時間に5分の散歩で大腿動脈の機能が正常に保たれることが確認できたという。
ユタ大学の研究では1時間につき2分の軽運動を行うだけで、ずっと座り続けた人に比べ死亡リスクが33%も低下することがわかったそうだ。
つまり、1日の中で一定の時間に集中した運動を取り入れるよりも、連続した座位時間を取らないようにこまごまとトイレや雑用を行い、軽運動を頻回に取り入れる方が「座りっぱなしのリスク」を軽減することに有効だということだ。
自分も長時間座りっぱなしが続くと体が我慢できなくなり、立った状態でパソコンを操作するとか、テレビを見るということがよくある。
どうやらそれは正解だったようだ。
というより、もっと頻繁に立つ動作を取り入れていたほうがよかったようだ。
これからは意識的に立つことを取り入れ、少なくとも1時間以上座位のままでいないように心がけるようにしよう。
一頃、パソコンが普及し始めた頃、しきりと「1時間のパソコン作業をしたら10~15分の休憩を取りましょう」などと言われていた。
これは厚生労働省が提唱しているディスプレイ作業が及ぼす精神的・身体的疲労に対する予防のための作業ガイドラインだった。
主に視覚的な問題として捉えられたものだった。
しかし、現実にどれほどこのガイドラインは守られているだろうか。
もしかしたら、若い人にはこのガイドラインすら聞いたこともないという人もいるかもしれない。
現在これだけ「座りっぱなしのリスク」は死亡を早めるリスクであることが明らかとなっている。
個人的に工夫してこまめに動くことも大事だが、せめて「1時間に5分の軽運動」を職場の合意事項にしたほうがいいのではないだろうか。
ぜひ職場の皆さんと話し合ってみて頂きたいと思う。

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